放課後の花
てる
放課後の花
「……ねえ、本当にするの?」
「……佳奈は、嫌?」
「嫌じゃ……無い、けど」
窓から夕焼けの日が差す、放課後の教室。
壁際で肩を抱かれ、逃げ道を塞がれているのは、ショートヘアの女の子。佳奈と呼ばれたその子は、吐息がかかる距離にある顔から、わずかに目を逸らした。
「玲奈は、いいの?」
「? ……どうして?」
佳奈の肩を手で留める、玲奈と呼ばれたその子は、長い黒髪を揺らし、首を傾げながらそう返す。
「だって、こういうことって……。好きな人とやるもの、でしょ? 幼馴染と、そんなこと……」
「でも、佳奈は嫌じゃないんでしょ……?」
玲奈は真っ直ぐ、優しい瞳で佳奈を見つめ続ける。
「っ……それはまあ、そう……だけど」
チラリとその瞳を見てから、また佳奈が視線を外すと。
「ねえ……ちゃんと、私の方見て」
「……ぁ」
肩に置いていた手を、ゆっくりと佳奈の頰を両手で包むように、優しく支える。そして、しっかりとこちらを向かせて、目を合わせた。
すると、佳奈の顔がみるみるうちに赤くなっていく。
「佳奈って、本当に可愛い」
愛おしそうに見つめて、そう言った後。玲奈は左手を佳奈の腰元までなぞり、キュッと抱き寄せる。
「あっ」
そして佳奈の耳元でもう一度、囁いた。
「ねえ、キスしても、いいでしょ?」
「っ……! …………い、一回、だけなら……」
「ふふっ、ありがと」
夕焼けの日に写し出された2つの影が、静かに重なった。
放課後の花 てる @teru0653
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