野菜ジュース、雨どい
韮崎旭
野菜ジュース、雨どい
雨が陰気に雨どいを伝い、こんなはずだったのかという気分にさせるが、実際にこんなはずだったのかはわからない。先刻の服薬がまるで拘束衣のように視界をやさしく包んで何も見えなくした。雨どいは叫ぶ。黙っていてほしい。
今日くらいは、といって、もう3日も天気は湿っぽかった。雨曇りみぞれ曇りのち雨。寒気が、床板の上に蔓延している。二度と内科に行きたくないと思う。たぶん長持ちができない管理不行き届きな身体なので、壊れる前に自死しようと思われてならない。雨どいが陰気に夕方が来たことを、玄関の窓際で告げている。もう何年も窓口が頭から離れない。窓口に縁の多い生活をしているのに、電話で済ませようとさえ、思わずに様々なものを放棄してきた。リスパダールは、動けなくなる。
雪が陽気に雨どいを凍らせ、私は沈黙する。この場にいない人間のことを考えている暇があるのなら、空にも核戦争の軌跡を見逃せばよかったのだ。側溝には非人間的な量の狭窄と見損なわれた者共が、安易に眠っている。静脈に浮かんだ虹は、もう誰にも幸福を説いたりはしないし、また、哲人でも天文学者でもない。エジプトが東にあるか西にあるかで意見が分かれていた折に、アスファルトの皮膚がかさかさとささやいた。それはあたかも、雨のように揺れ穿つ。またここへ、失望を餌に帰っておいでと、またここへ、失墜をたしなみに戻っておいでと、より一層の陰惨と悲壮が、空き家同然の空虚をたたえた冷たい床の上で観劇するのを、見においで、そんなことが書き連ねられていて、私は、ただ列車を待つのすらつらくなる。
足元が安定しないのだ。ねじが傷んでいるし、人間は機械ではなく潜在的な生ごみであるから、飛び込み台に見立てた、今日から、野菜ジュースで健康になります。
野菜ジュース、雨どい 韮崎旭 @nakaimaizumi
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