「ちゃん」付けって自分じゃなくてもイラっとしません?
朝目を覚ましたら、世界は劇的に変わっていた。それはまるで、物語のように。
二度寝してしまいたい気持ちを我慢して、布団から出る。重たい瞼をこすり、むくんだ足を引きずって、わずかな頭痛を引っ提げながら、やっとのことでリビング辿りつく。コーヒーを淹れたいな、と思いつつも億劫で、ついついXXXを起動してしまう。これをしてしまうと、少なくとも三〇分はその場を離れられなくなるのが毎朝のオチだった。
『業界に衝撃が走っています。飲食からファッションまで幅広い分野で一定のシェアを占めていた――グループ社長の――氏がセクハラの容疑で逮捕されました。――氏は会社経営の傍ら、メディアにも積極的に露出し、歯に衣着せる発言でお茶の間にも知られている人物でした。
警察によりますと、――氏は、被害者である秘書に対して繰り返し「くん」付けで名前を呼び、心理的なダメージを故意に与え続けていたとのことです。警察は――氏が高齢であることが事件の原因とみて、体調面に配慮しつつ慎重に取り調べを行うとしています。
被害者の両親は涙ながらに残忍な犯行をカメラに告発しています。
「うちの子はずっと嫌な呼ばれ方をされ続けた。反論しようにも、社長の地位に怯えて声が出せなかったのだと思います。パワハラについても併せて罪に問われてもらいたいです」
――氏は警察の調べに対して「男をくん付けで呼んで何が悪い」「私と彼の問題だ」などと容疑を認めながらも反省の態度を示していないとのことです』
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