第7話 邂逅

 稲荷山いなりやま学園、敷地面積が74万8千m2を誇る大型施設である。日本人が理解する為に分かりやすく説明すると東京ドーム16個分の大きさに匹敵する程の大きさがある。

 何故それ程にまであるかと言うと、稲荷山いなりやま学園と陰陽道関東本部は同じ敷地内にある事や敷地内にコンビニ、スーパー、病院など商店街があるのも要因だが、学園にある施設が最もの要因となっている。

 3学年合わせ7千を超える生徒数、生徒による符を研究製造する研究室、1学年全クラスが一度に模擬対人戦が出来る程の戦闘訓練室

 研究室と戦闘訓練室は全学年がいつでも仕様出来る様に3ヶ所づつ設置されている。


 こんなマンモス校で迷わない新入生はいないと断言出来る、現に僕も……


「えっ……と1年6組……あれここ2学年の教室」


 何処で間違った? まさか初っ端こんな事で壁にぶつかるとは……


「君、もしかして新入生? 」


「えっ……はい」

 急に声を掛けられ少し焦って返事を返す。


 こんな事前もあった様な……僕は以外と人見知りをするタイプなのか? いや、小さな村で長く生活していたから知らない人と話す耐性がまだ整ってないだけ。

 ……自分自信を守る考え方はすぐ頭に思いつくんだよな


「ふふっやっぱりね、ここ広いよねー君見てて迷って困ってるな〜って思ったから声かけちゃったよ」


 顔が熱くなっていくのが分かる……


「君、何組? 連れてってあげるよ」


「ありがとうございます……」

 最近の僕は女性に救われてばかりだな……これは男性としてどうなのだろうか……。


 コツコツと靴の音が聞こえる位静かな廊下を2人で歩いて行く。

 あと2時間後に行われる入学式の準備で大半の上級生、先生は体育館にいるらしい。


「君、名前は何て言うの?」


伏見ふしみ あきらです」


伏見ふしみ……君ね、ぴったりの名前だと思うよー! それと私は2年の玉響たまゆら 桔梗ききょうよろしくね!」


 明るい人だ、この人の近くにいるだけで不安と言う概念がなくなるほどに。


「あと私、君の秘密分かっちゃった」


 何だ……急に深妙な顔になった、まだ僕は入学前との事で【SDT】を貰ってなく【魔力封印符】を装備出来ていない状態。

 この人は僕の中に秘められた鬼の魔力を感じる能力を持っているのだろうか……。


「君……東北地方出身でしょ〜!」


「……へぇ? あぁはい、そうです」


 思ってもいなかった解答に変な声を出してしまっていた。


「やっぱりね〜標準語を話してるつもりでも、少し訛ってるんだもん」


「よく分かりましたね……」


「だって私も東北地方の出身だからね〜、いや〜仲間が増えて私は嬉しいよ!

 あっそうだ、私も人の事言えないけど東北地方にも学校はあるのに何でわざわざ東京に?」


 息つく暇もなくずっと喋っている……


「親の関係で……です、先輩は何で東京に?」


「先輩! いい響きだねぇ〜、いいよ可愛い後輩に教えてあげるよ!

 私はね東京と言う大都市に憧れてノリで来ました〜学校終わりに友達と渋谷や原宿に行くのが夢でしたので!」


 その事を堂々と言える強いハートの持ち主って事はよくわかりました……


「あれ? もしかして引いてる〜、顔に出てるぞー」


「あっ……すみません」


「ふふっ冗談、はいここが君のクラスだよ〜」


「ありがとうございます、先輩」


「ふふっいーえ、そうだ伏見ふしみ君最後にいーこと教えてあげるよ!」


 玉響たまゆら先輩は、僕に近づき耳元で小声で……


「もうすぐ無くなるかも知れない世の中なんだから、今を楽しんだ方がいいよ……」


 身も毛もよだつとはこの事だろうか……僕はその言葉にゾッとしていた。

 額から一滴汗が滴り落ちる、その言葉に何も返せなかった……いや声が出せなかったという表現の方があっていたかも知れない。


「じゃあ、またね〜」


 先輩は最後に忘れかけていた不安を呼び覚まし、僕に背を向け走って行く。


 パンパン、と両頬を叩き気持ちを入れ替える。


 今は自分の事を考える方が先


 ガラガラガラっと教室のドアを開け一歩踏み入れる


「おっ最後のクラスメイトかな」


 僕以外のクラスメイトは全員揃っていた。

 最後の一人っていうのは一番視線を受ける役割なんだな……


「おーい、多分君の机ここだと思うぞー」


「ありがとう……」


 ガラ、椅子を引き腰掛けると後ろの席の男子生徒が僕に話しかける。


「よう! お前、伏見ふしみっていうのか! よろなー」


 名前……あぁ机に名前が書いてあるのか、うん? この字何処かで見たような……気のせいかなぁ


「君は?」


「俺は宗方むなかた 遊馬あすま、俺の事は遊馬あすまって呼び捨てでいーぞ」


 幸運だ始めにどんな人でも気兼ねなく話しかけてくれる人に出会えた事は。

 早くも友達ができそうだな。


「分かった、遊馬あすまよろしく。

 あと僕の事もあきらでいいよ」


「おおっよろなー! あきら


 こんな感じ久しぶりだ……同い年の子、友達との会話とても心が落ち着く。


「それにしても珍しい髪の色してんなー、染めてんの?」


「僕にも分からないんだよね、小さい頃は黒かったんだけど、急にね……」


「へぇーそんな事もあるもんなんだな」


「おい、遊馬あすまお前本当に知らない奴と仲良くなるの得意だよな」


 低音の声で話しかけて来た人物に僕の人見知りかも知れないメーターが逃げろと警告を出しているように感じていた。

 細く尖ったような眼光に赤髪オールバック、制服は崩さず着ているようだが……これはクラスに必ず一人いるというヤンキーという種族だろうか。


「あっ奥の席で寝てたの康介こうすけだったのか。

 どうしたーその髪高校デビュー?」


「おい! いきなりバラしてんじゃねぇよ!」


 あっ……意外と仲良くできそうな気がする。


「あぁ誰だおめぇ、何で俺見てにやけてやがる」


 やっぱり思った事を顔に出さないように気をつけなきゃな……本当に僕の顔だけは表現豊かだなぁ。


「まぁまぁ、康介こうすけ落ち着けって」


 その時予鈴の鐘がなる。


 ガラガラガラ……「みんな席に着いてー」


「あっ先生が来たな、康介こうすけ後は放課後にな。」


「チッ……」


 康介こうすけ君が席に戻り、前の扉からコツコツとヒールを鳴らし教壇に立った人物その人は……。



 僕はこの時9ヶ月前、小野目おのめ先生との会話が蘇る……


【だから『先生』何ですね】


【それもあるけど、まぁ後に分かるよ】


【……?】


 やっと分かった……こんな簡単な問題の解答が出せなかった自分が恥ずかしく思えてくる。




「これから1年6組を受け持つ事になった担任の小野目おのめ 皐月さつきです。

 皆さんこれからよろしくね」

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