第3話 ノーカウントの基準点はどこなんだ?

 部室は暑い。



 練習後、へばってるとなりの後輩にペットボトルを差し出す。

「あっ、飲んでいいんですかぁ?」

「飲みかけでよかったらね」

「それじゃ遠慮なく。あざーっす!」


 きゅぽっ(蓋を開けて)


 ぱくっ(ペットボトルの口をくわえて)


 一気にごくごくごくごくごくごく!


「ぷはーっ!うめぇーっ!」


 え⁉


「ちょ……ちょっと……それ……」

「あ?全部飲んだらダメでした?すいません」

 顔を真っ赤にして……

「いや、それ……間接キス……」

「え?ああ、これくらいノーカンでしょ?」


 ん?


「ノーカン?」

「ですよね?」

そうか……考えすぎか?

「あ、でもさ。リップって考えたら、やっぱりそれは間接キスじゃん?どっちも唇が直接あたる物だよ?そっちだって私のリップとか、使いたくないでしょ?」

「いやいや、男が使ったリップならともかく、女同士はノーカンですよね?」

「お前勇者か⁉」

「えー?そこまで?先輩みたいな可愛い人のリップだったら、全然おっけーですけど?」


 ぼんっ!

 私は顔が真っ赤になった……

 コイツ……天然?


「ちょっと話がずれちゃったね……あー……私の基準おかしいのかな?うー……他の例……」

「顔が赤いっスよ?」

「お前のせいだよ‼」


 落ち着け……ノーカウントの基準に話を戻そう……戻そう……


「人工呼吸は?」

「いや、それこそ命にかかわる問題だしノーカンでしょ?それカウントしたら、消防警察自衛隊、現場で人工呼吸したのみんな直接キスじゃないですか。」

「そりゃそうだ……あんたの勇者っぷりに、質問がおかしくなったよ……」

 動揺のあまり、当たり前の質問をしてしまった……

「当然、先輩が倒れたら、私真っ先にします!」

「この話の流れでなんで呼吸するようにそんな事言える⁉」


 落ち着け……ノーカウントの基準に話を戻そう……戻そう……


「ポッキーゲームは?いくらなんでもあれ、大失敗でキスしちゃったらノーカンで済まないよね!」

「いや、ゲーム中の不幸な事故でしょ。」

「不幸なのにノーカン⁉」

「思いっきり『ぶちゅーっ!』ていってもノーカンですよね?」

「私の中でお前は伝説の勇者にジョブチェンジしたよ!」

「試してみます?」

「しねーよ!」


 ぜーっ……ぜーっ……


「伝説の勇者様……」

「私そんな名前でしたっけ?!」

「もうこの話終わりにしよう……おかしな話をした覚えがないんだけど……どこで狂ったんだろ……私のHPは0だよ……」

「先輩、そんなにちゅーしたいですか?してあげましょうか?」

「お前絶対解って言ってるよな⁉」

「大丈夫。女同士だし、舌入れなかったらノーカンっスよ。」

「もう許して!私が悪かったよ!」

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