7.「空」の街 スカイフロントウェア(3)

「……やっぱりあなたはここにいるのね」


 この間の街で会ったばかりなのだが彼がここに現れるのは納得がいく。

 何故ならタカちゃんはこの街のコミュニティに属する賞金稼ぎだからだ。


「いつもいがみ合ってるお二人が一緒だなんて珍しいじゃないか? 前の闘技大会で友情でも芽生えたのかい?」


 くちばしの付け根をニヤリとさせタカちゃんは笑う。

 器用な鳥だ。


「そ、そんなんじゃないわよ! 私はジロウを倒すために同行しているの!」

「……どうゆうことなんだ?」

「あーこの前のとりさんだ!」


 イデアが不思議そうにしているタカちゃんに気付き指差す。


「イデア様、人を指差すのはよくないんですよ!」


 お前は舌で指差すけどそれはありなのか?


「ジロウの旦那の背にのってるお二人は前の大会でも見かけたな。 旦那も遂にコミュニティを作ったのか?」


 嬉しそうに笑うタカちゃん、確かにこいつとも付き合いは長いが何様のつもりなのだろう。


「……まぁ事情があってな、四代都市を巡ってるんだ」

「ほう、それで我が都市スカイフロントウェアに来たと言うことか!」


 嬉しそうに俺達の回りを飛び回るタカちゃん、この前の大会でボロボロにしたのが嘘みたいだ。


「とにかく私達は早く街について長さんに会わなきゃいけないんです!」


 かめちょんはうっとうしそうにいう。

 そんなんだから異動になるんだよ。


「まぁまぁ長に会うということなら俺がついていった方が話が早いと思うぜ!」


 そういってタカちゃんは俺達の前に降り立つ。


「どうゆうことですか?」

「俺はこれでもこの街の宣伝大使だからね! 長とも古い付き合いなのさ!」


 このゲームがリリースされてそんなに月日はたってないんだが俺も同じ様なことをいうし言わないでおこう。


「なら案内してくれるんですか?」


 自分に都合のいい話になるとかめちょんは黄色くなる。

 わかりやすいやつだ。


「まぁジロウの旦那と角の姉ちゃんとも長い付き合いだ! 折角だから俺も同行させてくれよ!」


 ……この流れは見覚えがある。


「小鳥風情が着いてきても邪魔になるだけよ、失せなさい」


 ナチュラルが口当たり強くタカちゃんに言い放つ。

 お前は本当に松下なんだよな?


「まぁまぁ角の姉ちゃん、固いこと言わずにさ。 どうせ我が街はすぐそこさ!」


 そういうとタカちゃんは再び舞い上がる。


「チキンジョッキーの兄貴はあんたらの到着を心待ちにしてるんだぜ?とびきりの試練を用意してな!」


 ……こいつ、俺達が街で何をするのか知ってるのか?


「おい、タカちゃんそれって……」


 俺が聞き終える前にタカちゃんが発言する。


「俺は入り口で待ってるから準備が出来たら門まで来るんだな! 途中じゃセーブ出来ないぜ?」

 そうして彼は風のように去っていった。




「なんだったんでしょう今の?」

「……さぁ、わからないわ。」

「とりさん格好いいね!」


 三人の感想を聞き終えて俺は不安が過る。

 この街の長には会ったことはないが顔は知っている。

 俺はこのゲームをリリース前から調べていたが、それはつまりリリース前からこのゲームが取り上げられていたと言うことだ。

 新しい情報がでる度にそれを紹介する輩がいたと言うことだ。

 このネットの復旧した現代で情報を発信するサイトと言えば動画サイトだ。


 要するにここの長は動画サイトで情報発信をし、多くの信者を得ている今の時代のエンターテイナーなのだ。


「チキンジョッキー……」


 テレビの芸能人よりも知名度の高い鶏頭のパンクな広告塔、彼の名はチキンジョッキー。


 タカちゃんがいうように俺達の到着を待って試練を出してくるのだとしたら何も起きない筈がない。

 何せ彼は毎日このゲームのプレイ動画をあげているのだ。


「……俺達もゲーム実況デビューかぁ」

「なにか言いましたジロウさん?」

「何でもない、気付いてないなら気にするな」

「そんなこと言われると気になるじゃないですか!」

「早くあのとりさんのところにいこう! ジロウ!」


「そうよ、さっさとけりを着けてあなたは私と戦うのよ!」


 何も考えてない三人を前にタカちゃんがついてきてくれた方が話が早かったなぁとため息をつく俺だった。

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