メンヘラ少女と不運な吸血鬼
南高梅
プロローグ
そこに少女がいた。
名前があるかもしれないし、無いのかもしれない。
とにかく少女がそこにいるのだ。
現在23時30分、少女は24時間営業スーパーの袋を持って家路についている。
とにかくやる気が出ず、何もかもどうしようもなくなってからようやく何かができるようになるのだ。
今日も食料を切らし、1日絶食の上でのスーパーへの来訪だったのだ。
少女というには少々年齢が高いかもしれないが、彼女は少女だ。
子供のころに大人であることを求められた、所謂アダルトチルドレンである。
そして少女は鬱病である。いや、訂正しよう。
『現状は』鬱病である。
精神科の診断など、安定するものでなく、とめどない変化をするようなものだ。
少女の診断されているものはこれだけではない。
強烈な希死念慮、睡眠障害、社会不安性障害、とにかく病のサラダボウルなのである。
ふわり
そこで前方に何かの気配がした。
見ればそこには、タキシードのような服を着た15~18歳ぐらいの少年が立っていた。
正常な精神の持ち主であれば即刻通報し、保護してもらうだろう。
しかし少女には関係ない。
なにせ生きるだけで精いっぱいだからである。
「死ぬこと以外かすり傷」という言葉があるが、彼女の場合「生きてるだけで致命傷」だ。
彼女は少年を無視し、横を通り過ぎようとした。
「俺は吸血鬼だ。怖くないのか?」
少年から声をかけられた。
確かに改めて観察してみると、真っ白い肌に真っ赤な瞳、とがった耳など、ファンタジーで見るような外見をしている。
「だから、どうしたんですか?」
確かに非日常ではあるが、今の少女にはそれを楽しむ余裕はないのだ。
「吸血するぞ」
少年はそう言うと、少女の首筋に噛みつき、少しして
離してむせ始めた。
「おい、お前なんて血をしているんだ。こんなまずい血初めてだ。もうお前に用はない。帰れ。」
「言われるでもなく帰宅中ですよ、それじゃ、さよなら~。」
深夜の不思議な遭遇をき気にもせず、少女は無事家路についたのだった。
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