100万人のクローン就職面接を突破せよ

ちびまるフォイ

どうしてそこに入ろうと?

「知っての通り、我が社は普通の人は採用しない。

 なので、君の採用面接も特殊なものを実施する」


「何をすればいいんですか。靴を舐めるくらいならいくらでも」


「100万人の面接をしてもらおうか」

「えっ」


会場へと通されると、100万人の人間がずらり並んでいた。


「彼らはクローンでそれぞれに異なる能力がある。

 優秀なクローンは加点され、無能なクローンは減点される」


「クローンの良し悪しを見極めなくちゃいけないんですね」


「その通り。あるものはなんでも使っていい。

 最後にクローンの合計点が平均以上なら合格だ」


「がんばります!!」


採用試験が開始された。


クローンなので体も顔も完全に一致している。

ひよこのオスメス見分けるよりもずっと難しい。


「あの! グループ面接を行います!

 それぞれのグループで自己PRをお願いします!」


ごく普通に面接で良し悪しを決めることにした。

見た目こそ同じだがクローンは十人十色。


長所も短所もみなバラバラで、良し悪し判定するのも難しい。


やっと1万分の1が終わったところでアナウンスが聞こえた。



『残り3時間です』



「時間制限あるのかよ!!」


ゆっくりグループ面接などしている時間はなかった。

すでに時間は残り少なくなっている。3時間じゃとても全員を査定しきれない。


「そうだ! テストで判定しよう!!」


能力の良し悪しを判定するために面接ではなくテスト用紙を配った。

クローンたちは一心不乱にテストを解いていく。


みな同時にテストを提出したので、備え付けてある採点機にかける。


「いやぁ、最初からこの方法をしておけばよかった。

 これなら効率的に誰が優秀かどうかわかるぞ」


採点の結果、合格点を満たしたのはわずか数名だった。

あまりに少ない。


「そ、そんなに難しかったかな……?」


無能クローンが入らないように難しくしたことで

合格者への入り口がぐっと狭まってしまった。


合格者が全員優秀クローンとして加点されたとしても

人数が少ないので合格点を超えることはできない。


かといって、テストを簡単にしてしまえば

今度はたまたま合格する無能クローンにより減点されてしまう。


残り時間も迫ってきている。


「や、やっぱりこの中から、優秀な人材を見抜くなんてムリだ……」


100万人のクローン達は次の指示をただ待っていた。



『試験終了です』


『クローンの点数を合計します』


 ・

 ・

 ・


『合格点です! おめでとうございます!!』



「やった! 合格したぞ! 大成功だ!」


喜んでいると拍手をしながら面接官がやってきた。


「おめでとう、よくぞ合格点までたどり着いたね」


「最後の最後まで諦めないで良かったです。

 ようは、クローンで合格点を満たせばいいんですよね?」


「その通り」


「だったら、優秀なクローンを探すんじゃなくて

 クローンをもとに優秀なクローンを作り出してから

 もともといたクローンを全部処分すればよかったんですよ」


それを聞いた面接官はふたたび拍手した。



「素晴らしい!! 君のような倫理観が低く、貪欲で、非情な人間こそ求めていた!

 ようこそ! マッドサイエンティスト株式会社へ!!」

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