不思議な夢

水野優子

第1話 日常の夜

赤いミニスカのドレスを

黒いロングコートで身を隠すように包み込み長く細い足を際立たせるヒールで女の人達が歩いていた



私にだってそのくらいの姿には慣れる

ちいさな葛藤を

小さな頭の中で考えながら10cmヒールの

パンプスを一際響かせた


目まぐるしく人が行き交う街を

大学生になってから毎日のように

通っているCLUB Infinityへ

慣れた足取りで人の隙間を抜い歩き

段数の少ない階段を上がり

水色のパスを腕にくくり付けた




ドアを開ければミラーボールが

まだ人数の少ないステージを色鮮やかに

きらめかせて脳に響く程の激しい音楽が

冷めた心を目覚めさせる


「慶ちゃん!いつものやつ!作って」


音にかき消されぬように声を張って

友達になったバーテンのお兄さんに

注文をする


「あれ?今日はかすみちゃん1人?」


「うん!たまにはね!」


「そっか。じゃあ今日は本狩りの日だね」


レッドブルーとビールを慣れた手つきで

曲線を描いたグラスへつぎながら

作り慣れた笑顔で話す


「そこまで私飢えてないから!」



私はまだ幼い笑顔で対抗した


グラスを受け取り、喉に流し込みながら

ホール全体を見渡す



まだ平日の8時前は大体私の

特別な時間だったりする

さっきは飢えて無いと言っていたが

それは真っ赤な嘘。餓死寸前だ。



ここの所みんな何かと

彼氏とディズニーランドに行く事になって~

週末やっと彼の都合が空いて会える~

ごめん その日は彼氏と予定が入ってて~



なんて言って。遊ぶ事が減った。



「はぁ……」



大きなため息をついても

この場所では誰の耳にも入らない



「慶ちゃん!今度カシス作って!」



色々思い出したら酒が進む


「はい。」


空のグラスを受け取り

すぐ様背中を向けて次の動作に進む



少しネイルが崩れてきた爪を見ながら

次のお酒を待っていると




「お姉さん一人?」



耳元に手筒を添えて同じ年くらいの

男の子が声を掛けて来た


「そうだよ。」



こちらも同じように返した


「俺も一人なんだ。ちょっと相手してよ。」


けっこう慣れたナンパの仕方をする子だった





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