聖なる機械と獣のラブソング
みゃも
第1話 出会い
「はぁ、はぁ!」
「待てっ! 待やがれ!!」
蒼い瞳をした銀髪で髪の長い少女が、聖霊機械である聖機馬に乗る三人の兵士達に追われていた。
「くそっ、何処へ行きやがった! そこの草むらか!?」
「と……なると、ちょっと厄介だな。此処は、かなり深い森だぞ」
「おい、このままでは俺たち拙いんじゃないのかぁ? この事が上に知られたら、エライ目に遭うだろ?」
「そんなこと、言われなくたって分かってるよ! 余計な口を動かしてる暇があったら探せ! 探し出せっ!!」
「……」
少女は暫くの間そこで静かに身を隠したあと、兵士達が居なくなったことを確認し、更に森の奥へと進んだ──。
◇ ◇ ◇
「ねぇ~、工場長。聖獣兵器の起動には、あとどのくらい掛かりそうなんです?」
「ウェイン、そんなことワシにも判らんよ。何せ、全てが初めての試みだからな。判れ、という方が無茶ってもんだ」
「まぁ、それはそうなんでしょうけど………ん? わ、どうどう!」
フィルウェインと工場長が乗る聖機馬車の前へ、右手の森の中から突然に、一人の少女がよろけながら飛び出してきて、そのまま前へと倒れ込んできたのだ。
「おい、危ないだろう! 気をつけろよ!!」
「す、すみません……。直ぐにでも此処を退けま──痛ッ!」
見ると、脚や腕から多量の血を流していて、服全体が血に染まり、泥や埃などで薄汚れていた。その少女は銀髪で、とても綺麗な蒼い瞳をこちらに向けている。
「コイツはまた、酷い傷のようだな……。ウェイン、この娘さんを馬車に乗せてやりなさい」
「は? それは本気なんですか、工場長。今コイツの後ろには、機密部品が載ってるんですよ」
「仕方なかろう? まさか、こんな怪我をした娘さんをこのまま放ってもおけんからな」
「まぁ……そうですね。分かりましたよ」
工場長に言われ、ウェインは仕方なくその少女を抱きかかえ聖機馬車に乗せた。
それから直ぐに出立する──。
◇ ◇ ◇
「……此処は?」
女の子が目を覚ますと、そこは見たことも無い建物の中だった。いつの間にかベッドの上に寝かされていて、傷の手当までされている。どうやら服は脱がされてなかったようなので、ホッと安心した。
と、そこで部屋の入口の戸が開き、十九歳程の青年が顔を出してくる。
「お? ようやく目を覚ましたんだね」
「あの……あなたは?」
「僕の名は、フィルウェイン。皆からは、ウェインって呼ばれてる。君もそう呼ぶと良いよ。
それで、君の名は?」
「あ、私はメル。メル・アイヴィーです!」
「メルか、とても良い名前だね。御飯持って来たけど、食べるかい?」
ウェインが持つ皿の上には、パンとスープに果物、それからプリンが乗っていた。
「あ……ですが、私は持ち合わせが無くて…そのっ……」
「持ち合わせ? ばーか。病人から金銭なんか取るつもりないから、安心して食べな。腹減ってんだろう?」
ウェインにそう問われ、メルは頬を染めながらコクリと頷く。事実、この数日間まともに食べてなかったからお腹ペコペコだった。
「なら、食べな。僕は今から下に行って水を取ってくるから」
「あ、ありがと……」
「気にしなくて良いよ。こんな所で餓死されても迷惑だからね」
ウェインが冗談っぽくそう言って部屋から出て行くのを見届けたあと、メルは目の前のパンをジーッと見つめ、ゴクリと喉を鳴らし、勢いよく食べ始めた。
それから暫くして……ウェインが水の入ったコップを手に、鼻歌を歌いながら部屋の中へ入ると。テーブルの上にあった筈のパンとスープに果物、それからプリンは跡形も無く片付いていた。
どうやら、もう全て食べ切ったらしい。余程お腹が空いていたようだ。
それを見て、ウェインは目を点にしたあと、口を開く。
「あ………もし足りてなかったら、また何か持ってくるけど?」
「あのっ……それでは、コレのおかわりを」
そう言ってメルが指し示したのは、プリンが乗っていた器だった。それを聞いたウェインは、思わず「ぷっ」と吹き出し笑ってしまう。
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