圧倒的
その魔獣の登場において、コウヤは驚きを超える程の笑みが溢れ出ていた。
「やっとだ。……やっと…全力でやれる!」
この幸運にコウヤのテンションは上がっているが、頭の中は冷静だ。牛型の魔獣の
だが、焦ってはいけない。今まで戦ってきた魔獣とは強さのレベルが違う。相手の力が未知数の状況で無闇に突っ込むのは馬鹿のする事だ。まずは相手の出方を見る。そして相手の力を見極め、隙を作り、奴の下に潜り込み、
「さぁ、来い!ブラックバイソン!」
そう叫ぶと同時に鞘から『魔滅』を取り出し、ブラックバイソンの攻撃に備える。
ブラックバイソンは
「…っ!!」
刹那、ブラックバイソンの突進。そのスピードはハルグの比ではない。100メートル以上あったコウヤとの距離が一気に無くなる。至近距離まで接近したブラックバイソンは、
「ブォォォォォォォ!」
と、雄叫びをあげながらその大きく、鋭いツノでコウヤを刺そうとする。
「くっっっ!」
その攻撃を左に移動し、ギリギリ躱すも地面をバキバキに割ったそのパワーとハルグを超えるスピードに驚きを隠せない。
それでもこの攻撃によってできた僅かな隙を利用し、ブラックバイソンの下に潜り込めた。そして、ブラックバイソンの腹を十文字に斬る。すると、中心から僅かに光る
瞬間、ブラックバイソンは視認出来ない程のスピードでコウヤの後ろに回り込んだ。コウヤは『異常』だ。その反応速度も『異常』だったが、黒いオーラを纏ったブラックバイソンの移動スピードは『異常』なコウヤの反応速度を超える程の速さだった。
そしてそのスピードで突進を受けた。コウヤはなんとかその突進を『魔滅』で受け衝撃を抑えるも、抑えきれずに吹き飛ばされる。コウヤは10メートル以上吹き飛ばされ、なんとか受け身をとるもダメージは免れない。頭から血が流れる。
それはコウヤにとってあまりに久しい感覚と、あまりに久しい
「これは、まずいな。あまりにも速すぎる。反応しきれない…」
コウヤはブラックバイソンを良く観察する。
「奴を覆うオーラ、あれは奴の魔力か?だとすればこれは、…
コウヤがそう結論付けたところでブラックバイソンの頭の上に黄色い球体が出来る。雷属性の魔法なのだろう、バチバチという音が広範囲に広がる。そして、
「ブォォォォォォォ!!」
その球体が直径5メートル程になると、一気に飛散。1つ30センチメートル程の雷の球体がかなりのスピードで飛んでくる。その攻撃をギリギリで躱し『魔滅』で斬りながら直撃を防ぐ。
そして攻撃が止んだと同じ瞬間に懐から、
コウヤが拳銃を持っているのもその『異常性』ゆえである。この大きな隙を『異常者』たるコウヤが見逃す訳がない。
もう一度ブラックバイソンの下に潜り込み、まだ塞がっていないコウヤに斬られた傷の中心には、まだ
だが、もう少しで
それに気づいたブラックバイソンは自分のツノに固有魔法【超硬化】を発動し、更に雷属性魔法を纏わせる。そしてコウヤが反応出来ない程の、ブラックバイソンの最速の動きで自分のツノをコウヤに突き刺した。
ブラックバイソンのツノに腹を貫通されたコウヤは口から夥しい量の血を吐き出す。
その時、何か
真っ白だったコウヤの髪の右の前髪の先端が
その赤黒いオーラはコウヤの右手と、『魔滅』を覆う。そして『魔滅』の刀身が赤黒く染まる。
既に意識を失っているであろうコウヤは虚ろな目をしながら、『魔滅』を逆手に持ち替え、自分を刺しているブラックバイソンのツノを突き刺し、貫通させた。
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