君と一緒に凍えるために

香枝ゆき

プロローグ 春はあけぼのさくら散り

 白い紙吹雪と羽毛が部屋一面に舞った。

 だぼだぼのトレーナーとゴムの緩いジャージで、一人ぼっちで見えない敵と戦っている。

 外で桜が桃色の花をつけていて、期待に膨らませた誰かの門出を祝っているんだろう。


 早く雨が降ればいい。

 そしてアスファルトに落ちてしまえばいい。

 散って踏まれて流れてしまえ。


 夢破れた僕にとって、桜並木は地獄の道だ。

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