第6話 学校



『放送部です。お昼の音楽は』


 昼休みになって、誰かがリクエストしたJ−POPが教室に流れていた。なんの曲だっけとか考えていると、「あー。明日俺じゃん」とカズヤが言って、くるっとこっち向いてニヤリとした。


「ハルー、お前メル姫の写真とか撮ってないの?」


 まただ。

 ここんところ毎日のように聞かれるセリフ。カズヤ曰く、メル姫成分が切れたんだ、とのこと。メル姫成分ってなんだろう。ソファーの埃かと思っていたあのキラキラだったりするのだろうか。今後袋詰めして売りつけてやろうかな。


「いとこの写真とか撮らないでしょ」

「いや撮るでしょ! 俺なら寝顔は撮るし、着替えも写真に収めようと命かけるね!」


 犯罪行為を声高らかに宣言するカズヤの鼻息は荒かった。


 外見は完璧に近い、メル・アイヴィーさん(僕と同じクラス)は実は学校では神聖視されていたりする。僕もいことってだけでちやほやされるぐらいだ。

 ファンクラブは当然あるし、メルを崇め奉る宗教的組織も存在する。女子の間でも人気は高く、僕を女装させたらメルに近くんじゃないか、と一回フルメイクされたときがある。


(回想 start)


 ハルくんのメイクできた!

 見せて! 私も見たい! 見せて見せて!

 じゃあいくよ! メル様になったのか!

 (俺の顔が女子たちへご開帳)

 ……時が、止まる。

 ………………ごめんなさい、と女子。

 なんかみんな黒目から光が消えている。

 すすり泣く声も聞こえた。

 (そっと渡される手鏡)

 (覗き込む僕)


「ぁ゛――(声にならない声)――」


(回想 end)


 あれはひどかったな。

 そんなことを思い出していると、カズヤは僕のスマホを見ていた。


「おい、この銀髪幼女は誰だよ」


 そこにはメルたんの写真。


「触るな小僧ッ!」

 叫んでスマホをとりかえす。スマホを脇に抱えて、ゔぅう、ゔぅう! と猪の威嚇の声を出した。


「わ、悪い」( ̄д ̄;)


 ひいてるカズヤ。いや、ひくなや。お前が神聖なるメルたん視姦するのがいけない。メルたんマジ真理。


 まあいいけど、とカズヤは言うと、近くにいた別の人もこんなことを言った。


「いやけどまじめな話、メルさん大丈夫? もう三ヶ月も見てないけど」「そう、私も気になってるー」

 私もー、私もー、とみんなが口にした。みんな、メルが気になっているようだった。

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