未来へ向かって

勝利だギューちゃん

第1話

チュンチュン


朝、小鳥のさえずりで目が覚める。

「もう、朝か・・・」

窓を開けて、小鳥たちに挨拶をする。


小鳥たちは、わからないと思うがそれでいい。

1人暮らしの僕には、かけがえのない時間だ。


朝、朝食を食べる。

当たり前だが、自炊をする。

体に悪いので、なるべくジャンクフードは取らない。


ご飯は炊いておいた。

みそ汁も、昨夜のうちに作っておいた。

みそ汁の具は、豆腐とあぶらあげだ。


みそ汁を温めている間、目玉焼きを作る

そして、野菜サラダをつくる。


トマトときゅうりとキャベツだけだが、これで十分だ。


朝食を終えると、後片付けをする。

食器争い機に任せている。

キャサリンと呼んでいるが、このくらいは楽をしてもいいだろう。


部屋はオール電化なので、ガスはない。

今、住んでいるアパートのオーナーが、危険と取り付けなかったらしい。

まあ、ありがたいのだが・・・


朝食を終えると出かける。


今日は仕事はお休みだ。

なので、町を探索する。


住み慣れた町でも、まだ行ってない場所は多い。

なので、むしろ新鮮だ。


「見方を変えれば、何かが変わる」

よく言ったものだ。


アパートの近くに、河原がある。

ここは、カップルや家族連れで賑わう。


それを見ながら、微笑ましくなる。


昼になると公園の高台に行く。

ここで、昼飯を食べる。

お茶は自販機で買うが、昼飯のお弁当は作ってきた。


「女子力が高い」

自分でも思う。


「すいません」

女の子から、声を掛けられる。

「僕ですか?」

「はい」

女の子は、複雑な表情をしていた。


「もしかして、○○くんですか?」

「そうですけど、あなたは?」

「覚えていませんか?小学生のこと同じだった、××です」

忘れたくても、忘れなれない。


いい意味ではなく、悪い意味でだ。


当時、僕はいじめを受けていたが、その主犯がこの女だ。

小学生の途中で、僕は引っ越しをした。

それ以来、会っていない。


神様は、ここまで意地悪をするのか?

この女の顔を見た時、そう思った。


「ごめんなさい」

女は、いきなり土下座して、謝った。

話を聞くと、この女は中学生になると同時に、

逆にひどいいじめをうけるようになったと。


それで初めて、僕にしてきた事がひどいことだと知ったと・・・


「ずっと謝りたかったんです。ごめんなさい」

女は、ひたすら謝り続けた。


まるで僕が悪い事をしているみたいだ。

世間は、女の味方をするからな・・・


内心は、「今更遅いんじゃ」と、怒り心頭だった。

でも、それを口にはできない。


「気にしてないから」

僕はそれだけ告げると、その場を去った。


女はまだ、謝罪を続けているが、僕の耳には届かない。


今はそんな事をしている暇はないのだ。

過去は消せない。

でも、もう未来へ向かって歩いている。


今はあの女よりも、今日の夕食だ。

久しぶりに、とんかつを食べよう。


ささやかな贅沢だ。

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未来へ向かって 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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