第15話 詩音さんと買い出しに行くオレ

「来てんの〜? 詩音? 大野くん?」

 ガラッと部室のドアが開くと相楽部長が顔をのぞかせた。

「なにしてんの? 二人とも」

 怪訝そうな顔の相楽部長がオレと詩音さんを交互に見た。

 相楽部長は勘がするどそうだからオレは焦った。


「……」

「……」


「あーあれだ!」

 相楽部長がぽんっと手を叩いた。

「二人で絵本の用紙とか買って来てよ。今日は買い出しってことで帰っていいからさ。出来たら私には折り紙買ってきて! 私は貼り絵にしたいから」

 相楽部長が気を使ってくれた気がした。

 オレと詩音さんに流れる空気を相楽部長が察した気がした。


「いいの? あかねちゃん?」

「いいよいいよ。だって紙とかないと始まらないじゃない」

 相楽部長はさっさと部室に戻った。


「健人くん行こうか?」

「はい」

 オレは詩音さんと買い出しに行くに決まってる。


 だってオレは勇気を出して今度こそちゃんと聞きたかったし。


 そして詩音さんがオレにキスしたこともちゃんと聞きたかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る