第14話 詩音さんの好きって? もしかしてキスしました?

 オレが今一番楽しみにしている時間は部活の時間!


 学校生活で楽しみが出来るとこうも一日が輝いてくるんだな〜。

 まあ授業は理解が出来ないからイマイチだけど。

 授業時間にオレはこっそりノートの隅に絵本の構想を練ってみたりしてる。


 部活の時間になったからオレは早く詩音さんに会いたくて階段を駆け上り部室に急いだ。

「あっ」

 絵本研究部の部室のドアの前で詩音さんが立っていた。

 やっぱりつくづく思う。

 詩音さんは美人だ。

 光り輝いてオレの目に映ってる。

「こっこんにちは」

「こんにちは」

 詩音さんの笑顔が少し悲しげなのは昨日のことのせい?


 廊下にはオレと詩音さんの二人しかいなかった。

 学校の廊下は静かで少し薄暗いしなぜだか空気がヒヤッとしていた。

 だがオレの心は詩音さんに会えてポカポカしてる。

 詩音さんに会えると恥ずかしくて顔が燃えるように熱い。

 そして緊張で汗が吹き出す。


「ごめんね。健人くん? 傷大丈夫?」

 詩音さん。オレをもしかして待っててくれたんですか?

 なかなかそんなの思ってても言えない。

 自意識過剰すぎだろ〜。


「こんなの平気です」

 アザとか出来てますけど平気です。

 痛いのは心の傷が痛いですが。

 オレは村井に勝てなかったんですよ。

 格好悪い。

 冴えない男です。


「ごめんね。私のせいで」

 詩音さんは泣きそうな顔だ。

 オレは好きな子がこんな顔するのが一番苦手だ。

 どうか泣かないで欲しいと思って悲しくなる。

 オレがなんとかしてあげたくなる。

「いや若槻先輩のせいじゃないですよ」

 オレはニコリと笑う。

 詩音さんにも笑ってほしくて。

 詩音さんが泣いてしまったらどうしたらいいのか分からなくなるから。


「好きだよ。健人くん」

 えっ?


 唇が触れた気がした。


 詩音さんの唇がオレの唇に触れた気がした。


「若槻先輩」

 

 もっもしかしてオレにキスしましたか?!

 オレめちゃくちゃパニックってんですけど。

 あのっ!

 オレ。

 もしキスしてくれてたんならファーストキスなんですけど。

 詩音さんオレにキスしました?

 あなたが初めてのキスの相手ですか?


 夢のようで。

 嬉しすぎて。 


 詩音さんの好きって?


 詩音さん。

 あなたの好きって。

 オレのことが好きって思っちゃって良いんですか?


 オレ勘違いしちゃいますけど。



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