瞬間移動による転落死の可能性について ~探偵・紅雀楓はなりきれない~

佐久間零式改

第0話 超能力者・織畑教志郎の転落死について



 十年ほど前一世を風靡した超能力者がいた。


 その男の名は、織畑教志郎おりはた きょうしろう


 テレビなどに出演をして透視能力などを披露し、周囲だけではなく大学教授などから『本物だ』と言わしめたほどであった。


「これから私が超能力者である事を証明しましょう」


 織畑教志郎はそう言ってマスコミを自宅に集めて、とある実験を行うと宣言したのである。


 その実験とは。窓一つ無い二階の部屋から一階に瞬間移動するのを披露するというものであった。


「床や壁に抜け道がない事を確認してください」


 まずは、記者達を二階にある窓一つない部屋へと案内し、種も仕掛けもないことを確認させた。


 その後、織畑教志郎は、一階の大広間に移動し、この大広間に瞬間移動すると宣言した。


 ここでも仕掛けがないかを確認させ、記者達と共に二階へと戻った。


「十数分後、私は瞬間移動をして、一階の大広間に必ずいる事でしょう。この扉の前でしばしお待ちください。集中力が途切れてしまっては、私が超能力者であるという証明ができなくなってしまう。なので、扉の前から動かないでいてください」


 織畑教志郎はそういった窓一つ無い部屋に閉じこもり、実験を始めたのである。



 十数分後、一階から悲鳴が聞こえた。


 扉の前に待機していた記者達は何事かと一階へと向かい、大広間へとたどり着くと、織畑教志郎が大量の血を流して倒れていた。


 記者達は即座に救急車と警察を呼び、何が起こったのかを知ろうとしたのであった。



 警察の検死の結果、織畑教志郎は転落死であると断定された。


 一階の天上までの高さは約十メートルほどあり、その一階の天上付近から転落したものと推測された。



 この事件は、超能力者である織畑教志郎の実験失敗とされ、超能力者として非業の死、または、超能力者の証明による事故死とマスコミに言わしめたほどであった。


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