本当にあった怖い話
@yoll
カミングアウト
とある日のこと。私は職場にてそれなりにゆるーくお仕事をこなしていた。
忙しい時間帯は何とか切り抜け、後片付けをしている時間帯である。あれやこれやと散らかった物を片付け、次回に使うであろう物をそこここにセットしていると、違う部屋から後輩が部屋に入ってきて私の仕事をちょろちょろと手伝い始めてくれた。
実を言うと他の場所でも手が足りない時間帯で、そちらに人手を回さなければならないとは分かってはいたのだが私はそれなりに疲れていたし、「やー、助かったなぁ」なんて思いながら物言わず社蓄のような目つきで黙々と作業を繰り返していた。
そんな社蓄二人があらかたの仕事を片付けたとき、後輩が唐突に口を開いた。
今現在、こうして記憶を頼りに文章に書き起こしている訳なのですが、私にとって割とこれからの人生においても忘れることの出来ない出来事であったことを、これから少しずつ語っていきたいと思います。
いや、本当に何故に私にそんなことを告白したのか、何故私をターゲットに選んだのか、色々と考えてしまうので正直テロだと思う。そして、ネタにしてしまったことはその対価だと思って諦めて欲しい。いや、ホントごめんね。
「よる(仮名)さん。俺、一つ新しい扉を開いてしまったかもしれません」
そう言った彼は私とは5歳年下で、かれこれ7年の付き合いとなる。もしかすると8年かもしれないが、割りとどうでも良い。
「どうしたのよ?」
職場の中では弄られキャラのY君はその体質がゆえに、割りと日常的に笑いのネタを提供してくれることが多い。そしてどちらかと言えば、身を削ることが多いネタはその切れ味が鋭い。つい、この間も自転車通勤中に屁をしようとして本体まで出してしまったことは記憶にも新しく、会社に着くと同時に無言でトイレに入って行った。
「俺、オムツ穿いたじゃないですか」
既にこの告白自体が30代前半の嫁を持つ者としては些か疑問を覚えるところではあるのだが、これには先ほど話した屁の話に通じている。
30台半ばにもなり自転車通勤の途中に本体を出してしまったY君は、その時緊急的な措置として紙オムツを穿き一日を過ごしたのだ。何故、紙オムツがあるのかについてはここでは深くは語らないこととする。
「ああ、この前のあれね?もしかして癖になったとか?」
私も時間だけはそれなりに過ごしてきた人間であり、彼の上司と言う立場でもあるため、「ふふん。それ位は既に耳に入っておるわ。どうせ驚かせようとして自爆ネタを振ってきたのだろう?」等と記憶を掘り起こして納得はしていたが、何故突然そんなことを言い始めたのだろうと内心一寸怯えながらも、年長者と上司としての威厳を保つため、表情には出さずにその言葉を受け止めることが出来たと思っている。思ってはいるが、実際のところはどうかわからない。
だって、良い年したおっさんに仕事中に突然「俺、オムツ穿いたじゃないですか」ってカミングアウトされたら誰だってびびると思う。
でも、彼のそのあとの言葉は私の想像を超えていた。これが一つの小説の話であるならばその斬新な発想にハンカチを噛んで悔しがるほどの衝撃だった。決して真似をしようとは思わないが。
「実はあのあと、そのまま捨てるの勿体無いからおしっこしてみたんですよ」
この一言で、私が日頃彼からどのように思われているのかその一端を知ることが出来たのではないかなーって思った。だってこれからお昼ご飯の時間だよ?嫌がらせ?
え?なに?昨日の夜に鍋をしたからそのあとの出汁で雑炊作ったんですって位にその自然な流れ。
「日本の技術って凄いですよね。気持ち悪いのはほんの一瞬ですよ。高分子ポリマー凄いっすわ」
この時に脳裏に浮かんでいたのは、一昔前に外国人(主に見かけるのは中国の方が多いかな?)の方々がドラッグストアーでオムツを大量購入していたって言うニュースと、オムツにおしっこすると一瞬気持ち悪いんだぁって言う無駄な知識を得てしまった自分の姿だった。
【もう少し続いてしまう予定】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます