第19話 トラック転生、或いは歩哨(2020-06-04)
トラックが跳ねられて転生した。
何を言っているのか分からないと思うだろうが、とにかく、こうだ。
トラックを運転して、いつもの工事現場に資材を輸送してたんだが、道が混んでいて裏道を通ろうといつもと違う道に入ったんだ。
失敗した、と思ったね。
もともと、この辺は田舎道だったんだが更に酷い田舎のような風景になって。
これは、遅れちまうかな、とか思いながら急いでたら、向こうの方から土煙を上げて何かがやってきたんだ。
でかいメガネをかけた女の子だった。
なんだか、両手を左右に広げて、きーん!とか叫びながらこっちに突進してくんだよ。
やべ!ぶつかる!と思ってブレーキをかけたんだがな、間に合わなくて。
なぜか、こっちが跳ね飛ばされた。
***
この村では、滅多に赤ん坊が生まれる事がなかったので、生まれた時にはみんな喜んでいた。
だが、生まれた子を見て、みんな言葉を失ったのだ。
生後しばらく経って、この子が歩き出した時には皆から安堵のため息が漏れたが、それにしたって異様だ。
この子は、歩けるというのにタイヤも無いのだから。
椅子のような4本足をうごめかして歩く姿は、この世界では、この子の他には見かけないのだ。
――――――
「歩哨」はフレドリック・ブラウンの歩哨のようなオチをイメージしたから。
でもまぁ、カーズとか機関車トーマスのような乗り物が主人公の話があるくらいならそんな意外でも無いのかな。
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