眠り姫と従者と暗黒世界とET(~久々の堕天使~)

@Kanoooo

第1話

 「頼りになるわソイヤ」

 「ははぁ姫様。ありがたきお言葉」

 姫は城の外で三十人の従者を従えゴブリン狩りを楽しんでいた。ソイヤは血に濡れた剣で瀕死のゴブリンに止めを刺す。周りで見ている従者から拍手が起きる。

 「いぇーーーい」

 剣を掲げるソイヤに拍手する姫。「次は素手でゴブリンを相手して狩ってみて頂戴」

 「姫様。どうぞ」ある従者が切った林檎の乗った皿を姫の前に差し出す。

 「ありがとフェンディ」

 地面に打ち込まれた巨大な杭とゴブリンの足首を繋ぐ鎖が周りの安全を保証している。杭は四つあり生きているゴブリンは残り三体。

 従者がソイヤの剣を受け取る。「頑張れよソイヤ。幸運を祈る」

 「うん。サンキュー。アイゼル」

 素手で狩ろうとしたとき姫が椅子から崩れ落ちた。従者達が駆け寄り直ぐに城の医務室へと運んだ。

 城の主『モダーン・ジャズ・ウー』が人差し指を噛みまくりながらベッドに横たわる姫を見てソイヤに言う。「姫は眠っているそうだ。病気ではない。呪いだ。姫が眠る前に何か変わった事はなかったか?」

 「ゴブリン狩りを見て姫様は楽しんでました」

 「姫は子供の頃に蛇を酷く虐めていたことがあった。そのときは一週間嘔吐が続く呪いにかかった。調べたことはないが姫は呪いアレルギーの可能性がある。これからは呪いにかかりそうな事は禁止にしよう。城に居るもの全員に伝えておいてくれ」

 「分かりました」

 「姫にかかっている呪いは重度のものだと先ほど聞いた。治すには四つの希少なアイテムを用いて正しい儀式を行わなければならない。アイテムはどれも希少だが全てこの国に存在するものだ。ソイヤ。この国で有名な戦士よ。お願いだ。アイテムを集め姫の呪いを解いてくれ」

 「勿論です。俺も助けたいですから」

 「頼りになる。我が家に伝わる宝刀を貸そう。役に立つ」

 ソイヤはモダーンから宝刀を受け取り一旦外に出た。アイゼルが外庭の掃き掃除をしていた。

 「アイゼル。姫様は呪いにかかったそうだ。俺はこれからそれを解くアイテムを探す」

 「そうか。それでその布に包まった物は臨時収入か何か?」

 「宝刀だよ。モダーン様から貸して頂いた」ソイヤは布を取って剣を見る。「かっけえ。ダイヤモンドの刀身だ」

 「違う。これは白竜の角髭だ。繊細で折れやすいから個体数が少ない白竜の中でもこれを維持しているのは少数だ。この角髭がある内はここから外のエネルギーを吸うことで無限にホワイトブレスを吐く事が出来る」

 「それを俺が持つとどうなる?」

 「振ってみたら分かるよ」

 「セイヤ。ホイヤ。ソイヤ」

 「どう?」

 「汗かいた」

 ポケットからキャンディを取り出し口にいれるアイゼル。「キャンディうまー。宝刀なんだから何もないってことはないだろ。心配しなくていいよ」

 ロールパンを取り出し食べるソイヤ。「そうだな。鑑賞用を実戦で使わせはしないよな。ロールパン美味い」

 「美味しいそれ?」

 「中にバターをたっぷり入れて焼き上げたんだぜ」

 「すげえな」

 「美味い。トマトとチーズを一緒に食べたくなってきたから行くわ」

 「うん。アイテム探しに出掛ける日は教えてくれよ。見送りに行くから」

 「三時間後だよ」

 「仕事中だあ~」アイゼルは天を見上げた。「俺ぁ今日この日の為に生まれてきたのに」

 「間違いなく錯覚だから」

 「そっか。お前にそう言われて納得した。ていうかソイヤって食べるの好きだよな。昔お前が作った干し柿勝手に食べたらお前殺戮兵器になってたもんな」

 「あれは若気の至り」

 「じゃあな。ファイトだ」

 「はい」

 二人は別れた。

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