第13話

 私のムスコがコレになっているのかと思えば、口の中のものまで味気なくなりましょう。自分で夫婦交換だなんだと持ちかけて妻に浮気を勧めておいて、いざ妻が退屈凌ぎにしていたにすぎない、タコ助の存在を知ってしまえばもう狂わんばかりに心がざわめいて堪らないのです。他愛ない妄想ごときにこんなに心を乱されるのです。


 私は不安になりました。こんなことで、嫉妬に狂うような男ですから、本当に妻を他人に委ねて正気でいられるでしょうか。そもそもで、私にスワップなんぞというものの存在を教えてくれたのは、移動でやってきた若い部下でしてね、彼を思い出せばなるほどあの夫婦は自由奔放と言いますか、お互いがお互いに執着などありそうにも見えませんでしたから、急激に不安が増していったものです。


 まだ二十四だとかの、大学出のエリート幹部候補です。妻となればまだ二十歳だと聞いています。最近の若い連中は私などから見れば恐ろしいくらいです。平然と、互いの妻同士での組み合わせなどまで勧めてくるのですから……。


 

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