世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。

阿吽

第1章

プロローグ

 は突然現れた。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ……!!!


 地震とはまた違ったタイプの揺れ、それも細かく連続的に起こる揺れは、世界各地で同時に起きていた。


 やがて揺れが収まると、目を疑うような光景がそこにはあった。






―――――――――――――――――――――――






[──12月24日 22:00 渋谷]


 「ねぇ、あれなに?」

 「扉?めちゃくちゃでかくない?」

 「地面から生えてこなかった?」

 「なんかの撮影?」


 人々が足を止め、道路の真ん中にに目線が集まる。白い額縁のような部分が輝いている。また、扉の部分は全く理解のできない模様が描かれており左右で対象になるようになっていた。その模様も人によっては見方の変わってきそうな芸術的なもので、人々を魅了してやまない。だがそれが普通のサイズの扉であったらだ。


 そのサイズは真横にある一般的なビルの3階相当にもなる高さ、道路を横断するほどの横幅、人が2人並べる程の厚みを持った異様なまでに大きな扉であったのだ。






―――――――――――――――――――――――






 [──同日 同時刻 政府会議室]


 「直ちに避難警報を───」

 「それよりもあの扉を隔離せねば───」

 「地震はが原因なのか調査を───」


 怒声にも似た声が会議室の至る所から聞こえる。それもそのはず、原因不明、過去にも例を見ない謎の現象が日本を襲ったからだ。最初は皆、地震だと思っていた。だが今では地震であった方が良かったと頭を抱えている。その理由は語るべくもなくあの扉であった。扉は日本の各地で確認され、また、そのサイズも、柄も、違った。中には襖型だったり豪華な意匠の扉であったり金庫のようなものであったり……あまりにも謎の多い現象故、日本政府も頭を抱えることしか出来ないでいた。


 後に『聖夜事変』と呼ばれることとなるこの日の出来事は世界各地で同時に起き、大混乱となるのだった。






―――――――――――――――――――――――






 [──12月24日 21:30 アパートの一室]


 「なん……これ?」


 御歳24歳、大学卒業後の就活に失敗しフリーターとして日々を過ごしている朝谷京介あさたにきょうすけは、バイト終わりに売れ残りのケーキを持ってアパートへと帰宅した。動画でも見ながら1人寂しく過ごすか、なんて考えていたのに部屋の中、押し入れの片方の扉が謎に荘厳な雰囲気の引き戸に変わっていた。


 「あぇ……え?!なんこれ!?ど、ドッキリ……?大家さんが勝手にリフォーム的な……?」


 あまりの唐突さに持っていたケーキを落として右往左往してしまう。1Kの小さな部屋、ベッドと机に座椅子。小さな冷蔵庫と備付けのクーラーがあるだけの部屋だった筈なのに、超高級ホテルだとか金持ちの別荘にしかなさそうな扉が急に現れたことに驚きが止まらない。


 「えっ、えっ、これどうすれば……警察か?いや先に大家さんに聞いて……いやもう深夜だし……」


 とりあえずと思ってスマホを開く。するとトレンドニュースとして通知に「世界各地で謎の扉出現?!」というものがあることに気付く。


 「これって!この扉も同じなのか……?」


 部屋の中にある違和感ありまくりな扉。世界各地に現れたという謎の扉達。恐らく同じもので、なぜ自分の部屋にあるのかは分からないが、恐らく今のは色々な意味で普通では無いのだろうと京介は理解することが出来た。


 「扉ってことは……この先には部屋なりなんなりがあるってこと、だよな?」


 部屋に現れた扉を前に非日常感を感じ、それに加えバイト明けの疲労と深夜テンションで1周回って面白くなってきてしまった。


 「いや〜……これ。行くしかないじゃん?」


 落としたケーキのことも忘れて、扉のドアノブへと手をかける。少しひんやりとした金属製のドアノブはなんの抵抗もなく捻ることができ、そのまま扉は開いたのだった。


 「眩しっ……う、おぉ。」


 扉を開いた先は真っ白な空間だった。一切奥行も天井も床でさえも、部屋のようだがどこからが壁でどこから天井なのかを把握することが難しい空間だった。


 「なんだここ……なんも無いし、明るいだけの白部屋?」


 『ぱんぱかぱーん!』


 ビクゥッッッッ


 急に聞こえた女性の底抜けに明るい声にその場で飛び上がるほど驚く。


 「えっ!えっ?!な、なに?!」


 『おめでとーございまーす!あなたは世界ではじめて扉をくぐった方でーす!私たちの用意した新しい世界へ来てくれたお礼に特典をと・く・べ・つに〜!さしあげちゃいますよ〜!』


 「おおぅ……」


 あまりのハイテンションに着いていけず、生返事を返してしまう京介。辺りを見渡しても人影ば一切見えない。空間に響くように聞こえる声の主は見つけることが出来ない。


 『あっ!ちなみに私は人間さんの言うところの神様ですよ〜!そのお部屋もこうやって声を届けるために用意したので次からは直接ダンジョンに出るからね〜』


 「ほへ〜……んん?」


 ダン……ジョン?


 「ダンジョン?!」


 『そ〜ですよ!扉の先はぜ〜んぶダンジョンです!扉の意匠が違うのは中のダンジョンがそれぞれ特徴だったり難易度だったりがバラバラだからですね〜』


 い、いやいやいや!聞きたいのはそこじゃなくて……ダンジョンって漫画とかで見るあれか?モンスターが出てきたり宝箱があったり……あのダンジョン?


 「いやまぁ……ダンジョンは分かったんですけど、なんでまたこの現代に?」


 『なんか上の方の神様達が、今の世界じゃ面白味が少ないからちょちょいと追加して楽しもうぜ?って言ってなんか弄ってたらこんなんなっちゃったみたいですね〜』


 「て、てきと〜……」


 神様がいいのかそんなんで……要するにつまらんからダンジョン作っちゃおうぜってことだろ?しかも上の方って絶対名前聞いたら分かるくらいの神様じゃないか?


 『まぁそういうことなので!京介さんにはダンジョン特典とか諸々を差し上げちゃいます!え〜と、これとこれ、とあとこれも!ハイ!じゃあ京介さんは声に出してステータスと言ってみましょう!』


 「え?あぁ、ステータス?」


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名前 :朝谷京介

位階 :G

レベル:1

体力 :75/75

魔力 :30/30


スキル

【取得経験値10倍】

【剣術:素戔嗚流 Lv.1/10】

【無属性魔術Lv.1/5】

【心眼Lv.1/3】

【鑑定Lv.1/3】


称号

【世界初の探索者】


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 「うおおおお!!!マジでステータスだコレ!」


 ゲームとかで見るような感じのやつだ!てか、え、待て待て待て


 「スキルもりもりなんですが……」


 『そりゃ〜もう特典ですから!日本の神様たちがうちの国の子供たちは心配性の疑心暗鬼が多いから他の国よりも扉入るの遅くなるだろうなんて心配してた矢先に!京介さんが日本どころか世界で一番最初に扉を通ったもんですから大興奮のお祭り騒ぎでしたよ!』


 あぁ〜なるほど。いやまぁ確かに日本だとかなり厳しいかもなぁその辺。多分今頃政府とか警察とか自衛隊とか……あの辺の人達が頭抱えながら対処してるんだろう。人目に付くところの扉が結構あったみたいだしクリスマスの夜に大変だなぁ(遠い目)


 『普通ならLv.1でこんなにスキル持ってるなんてありえないんですよ?でもでもさっき言った通りお祭り騒ぎでして〜、素戔嗚様が俺の剣術をやろう!なんて言い出して〜、ほかの神様が便乗して俺も私も〜なんてことになって大変だったんですから〜』


 「あ、これそういう事なんですね……」


 全部のスキルがやばいも思うのだが、【剣術:素戔嗚流 Lv.1/10】っていうのが気になってたんだよな。普通のスキルなら流派とか無さそうなのに。てか神様の剣術って普通にとんでもなくないか?素戔嗚スサノオ様って俺でも知ってるぞ?


 『とりあえず私の役目は終わりましたね〜!やっと宴会に参加できそうです〜。あ、出口は京介さんの後ろにありますのでそこから出てくださいね〜。もう1回扉に入り直せばダンジョンに出るので〜頑張ってください!それでは〜』


 「あぁ、はい。ありがとうございました……?」


 そう言って声は聞こえなくなり真っ白な部屋にぽつんと突っ立った京介だけが残った。振り返ると言われた通りそこには入ってきた扉と同じものが存在していた。


 「さっきまでなかったんだけどな……」


 京介は言われた通り背後の扉を通る。一瞬の光の後、見慣れた部屋に戻ってきていた。時刻は22時過ぎで、あの部屋では少なくとも30分は話していたと思ったが意外と時間は過ぎていなかった。


 「はぁ……ケーキ片付けよ」


 とりあえず考えるのは一旦置いとく京介だった。











―――――――――――――――――――――――


あとがき


どうも、阿吽あうんです。

この作品が目に留まり、読んでくださったこの運命に感謝いたします。

素人ながらこの作品を一生懸命に書き上げていく所存なので、

フォロー・レビューの程よろしくお願いいたします。

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