成長したい、一生。
@thought
第1話始まりの家
今から思えば、その子は光から生まれたんだと思う。まあ、今は思い出すことさえできなくなったんだが。
そこには少年がいた。鬱蒼とした森の中に・・・。辺りの空気はピンと張り詰めていて、自分が存在していることさえ忘れそうになるほど静かな場所だった。
「ふう、今日からここでするのか。生活を・・・。」
ボロボロの家をひとりっきりで見つめ続けていた。少年には何もかも理解出来ていた。何故ここにいるのかも、何故人が寄り付きそうもない場所に一人っきりで立っているのかも、ただ一つ理解出来ない事があるとすれば、なぜ眼前の家がこんなにボロイのか・・・それぐらいだった。それでも何かに納得したのか、思い立ったように家に近づき思いっきりドアを蹴破った。ドアノブに手をかけるわけでもなく蹴るのを真っ先に選んだこの少年の行動は、だいぶ人の道にはずれてそうだ。
「うげっ、なんだよこの家。あの婆、俺にこんなとこ住めっていいたいのかよ。」
少年が目にしたものは、確かにこんなとこだった。蜘蛛の巣は、そこらじゅうにはりホウダイ、埃はかぶりホウダイ。人に見捨てられた様な家だった。唯一の救いといえば、玄関からすぐ目の前に置いてあるテーブルだ。しかもパーティー会場で使用できるぐらいのドデかいやつだった。傷と汚れは少々目立ってはいるが、少年の目でも値段の張るものだということは容易に想像できた。
「これは・・・まあ良いけど、しかしこのゴミのオンパレードは最悪だ。」
などとありたっけの文句を吐き出しながら、ボロ家を探索してまわった。物置らしい一角に来た少年は、箒を見つけた。
それを手に取った瞬間、キラリと目が光ったかと見間違えるほど「嬉しそうな顔」というより不気味なほどの「嬉しそうな笑み」を浮かべて、
「ふっ、あはは俺様に箒を持たせたあの婆め、一生後悔の渦の渦に巻き込んでやるぜ。」
言動とは裏腹じゃあないかもしれないが、掃除という言葉に愛情さえ感じ、日々の生活を送ってきた、変わった少年はすっかり掃除のおばちゃんに変貌しめくるめく甘美な世界に酔いしれていった。少年だけにしか理解出来ない世界に・・・。
時間が経つのも忘れるほど綺麗にし続けた。そう、少年はプロと称賛したくなるほどの腕前だったのだ。丸一日ですっかりボロ家は普通、いや普通以上の家になった。
「ずっと、ずっと住みたかった。ここは俺だけの家だあ。くーっ。」
感動に胸を熱くしている少年の名前は、マノア。マノアは、ハタと気が付いた。
「だからあの婆俺にこの家を・・・!」
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