漆黒の巨人

有原ハリアー

出陣直前

「“シュヴァルツェリーゼ”の起動を確認」


 俺は須王すおう龍臣たつおみ。“日独連合軍”の軍人だ。

 もうすぐ俺は、死地へと赴く。


「エネルギー安定率95%。出力上昇中、現在30%」


 どうして死と隣り合わせのクソみてえな場所へ行くかって? それは簡単。

 俺は、いや俺たち“日独連合軍”は、宇宙からの侵略者ってヤツに唯一対抗出来る可能性を残した組織だからだよ。


「安定率、100%。全武装とのリンク開始」


 それが、今乗ってる“シュヴァルツェリーゼ”ってヤツだ。

 まさか、マンガで見た巨大ロボってモンに、ホントに乗るとはな。


     *


 そういえば、今日は12月25日だ。

 世間で言えば恋人の日、元々はどっかの神様を祈る為の日。

 けれど“日独連合軍”に入ってからは、そんなもんはあって無いようだった。


 とは言え、別にモテない訳じゃない。

 恋人の額入り写真を、胸ポッケに入れてるからな。

 もっともこれは、「死ぬときはお前と死にたい」っていう、センチな願いだ。我ながら笑えるぜ、ハハ。


     *


「リンクを確認。コンディション、オールグリーン」


 いよいよだ。

 この地下基地から、“シュヴァルツェリーゼ”が飛び立つ。

 俺は“シュヴァルツェリーゼ”をエレベーターに乗せ、そのまま停止させる。

 ややあって、エレベーターが上昇する感覚を覚えた。


「発進準備完了。カウント60から開始」

『了解。カウントを始める。60, 59, 58...』


 さて、見送りの人間が続々と集まってるな。

 まあ無理もねえ。こいつシュヴァルツェリーゼは、“日独連合軍”の唯一の希望。

 そんな神様じみたヤツを一目見ようと、集まるのは当然だ。俺に言わせりゃ、ただの機械のカタマリに過ぎねえんだがな。


 ……って、ちょっと待て。

 あの金髪、忘れもしねえ。


 まさか、キミもこんなところに来ちまったのか!?


『30, 29, 28...』


 徐々にカウントが進む。

 頼む、少しでいいから止めてくれ!


『22, 21, 20...』


 それでも時間は無常だ。

 だから俺は、時間ギリギリまでキミを目に焼き付ける事にした。


『10, 9, 8...』


 そう。

 を生きて見られる、最後の機会なのかもしれないのだから。


『3, 2, 1, 0!』

「発進!」


 俺と“シュヴァルツェリーゼ”は、空の彼方へと飛び立った……。

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