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「みなさん。今日はみなさんの卒業の日です。未来に向かって精一杯、大きく翼を広げて羽ばたいていきましょう」
四ツ谷恵の小学校時代の担任の先生、似鳥涼風先生は恵たち小学校を卒業する六年二組の生徒たちにそう言った。
その言葉を高校生になった今も恵は忘れずにずっと覚えていた。
恵は担任の涼風先生のことが大好きだったからだ。
恵は今も、涼風先生のことを思い出すたびに、……私はちゃんと飛べたのかな? と心配になったりした。
そんな似鳥涼風先生は都立の図書館の近くにある公園のベンチに一人でぽつんと座っていた。
「似鳥先生」
恵がそう言葉をかけると、涼風先生は恵を見た。
それから少しの間、恵の顔をじっと見てから「恵さん? 四ツ谷恵さんだよね」と小さく笑いながらそう言った。
「はい。そうです」
恵は言う。
恵は似鳥先生が自分のことを覚えていてくれてすごく嬉しかった。
それから二人はベンチに座って少しだけおしゃべりをした。
すると似鳥先生はなにやら自分の教室の生徒たちのことでとても悩んでいるようだった。そのことですごく落ち込んでいるらしい。
恵は似鳥先生に葉月くんとのやり取りを伝えた。
すると似鳥先生は「青春だね」と言って恵を見て笑った。
「似鳥先生ならどうしますか?」
恵はそんなことを似鳥先生に聞いた。
「私なら絶対に追いかけるね。フランスまで行く」と似鳥先生は言った。確かに似鳥先生ならフランスまで愛する人を追いかけて行くんだろうな、と恵は思った。
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