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「先生さようなら!!」

 ずっと鏡の前で、一人で練習していた、とびっきりの笑顔と一緒に真由子は大声を出してそう言った。

 その大きな声と、それからにっこりと笑ったすごく珍しい真由子の表情を見て、少しして柳田先生もにっこりと真由子に笑ってくれた。

「さようなら! 小島さんも、元気でね!」

 柳田先生はそう言って、真由子に大きく手を振ってくれた。

「はい!」

 真由子は言う。

 そして二人は、永遠のお別れをした。

 ……それ以来、もう随分と時間が経ったのだけど、真由子は柳田先生と再び出会ったりすることはなかった。

 柳田先生は学園から京都の学校に転勤をして、そしてそれからすぐに真由子も学院を卒業した。

 卒業式の日に、真由子は生徒会のみんなと一緒に大泣きをした。

 それは今でも大切な、真由子の宝物のような思い出だった。


「プロポーズのお話。お受けしようかと思います」

 後ろを振り返って真由子は小鹿にそう言った。

「え?」

 小鹿は驚いた表情をした。

「本当にいいんですか?」小鹿は言う。

「はい。もちろんです」

 にっこりと笑って、真由子は言う。

 それから、私も随分と笑うのが上手になったな、と一人心の中で思ったりした。

「本当に、本当にいいんですか?」

 小鹿は言う。

「本当です」

 真由子は言う。

「でも、真由子さんには好きな人が……」

 その小鹿の言葉を真由子は小鹿にもう一度にっこりと微笑むことで止める。

「いませんよ」

 真由子は言う。

「私の好きな人は一色小鹿さんです」真由子は言う。

「……ありがとう」真由子を見つめ、本当に嬉しそうな顔で小鹿は言う。

 こうして小島真由子は親の決めた許嫁である一色小鹿と正式に婚約をすることになった。

 その選択に、後悔はなかった。

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