61 卵 らん ……恋。恋か。
卵 らん
……恋。恋か。
日向明里は恋に憧れていた。
「では、生徒会を始めたいと思います」
お嬢様学校である学院で生徒会長を務める明里は、そんな声で生徒会を開始した。
しかし、五人いる生徒会のメンバーの中で、真面目に生徒会を運営しようと考えているのは、生徒会長である日向明里一人だけだった。
「ねえ、明里。今日はもう生徒会やめにしない?」
副生徒会長である平結衣がそう言った。
「私、このあと、仕事があるんだよね」
「仕事って、アイドルの仕事?」
生徒会書記の山里椛が聞く。
「そう。だから、あんまりのんびりできないんだよね。長引くようなら、途中で抜けさせてもらうから。私」
「結衣がいなくなるなら、私も帰ろうかな?」
うーん、と大きな背伸びをして、生徒会庶務の深田早苗が言う。
「真由子はどうする? 一緒にどっかよってく?」
「ううん。私は生徒会に残るよ。読みかけの本があるし、それを読んでる」と生徒会会計の小島真由子が、本を読みながらそう言った。
「なんで生徒会室で本を読むのよ?」
「ここ、すごく静かだから」本から顔を上げずに真由子は言う。
明里以外、まったくやる気のない生徒会のメンバーたちだったが、それにはそれなりの理由があった。
明里たちの通っている学院は、都内のお嬢様たちが通うお嬢様学校であり、裏ではそれなりにいろいろと問題があることはあるのだけど、表立ってはこれと言った問題のない(自立した生徒たちばかりの)優秀な学校だった。
なので生徒会としても、あまり活動する内容がない、と言うことだ。
実際に、学院の生徒会は一つ前のある伝説的な生徒会を除けば、今、明里たちが行っているようなやる気のない、なんだかぼんやりとした生徒会であることが、この学院のある意味での、伝統のようなものだった。
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