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「初めまして」と優が言った。
「あ、えっと、初めまして」と小春が答える。
「僕は神田優と言います。宜しくお願いします」
「私は高松小春って言います。宜しくお願いします」
優と小春はそんな風にお互いの自己紹介をする。
それから、また二人とも沈黙してしまう。
小春は頭の中で、どうしよう? とりあえずなにか喋らないと……、と考え続けていたのだけど、なにも言葉が浮かんでこなかった。
すると少しして、「ふふ」と優が声を出して笑った。
小春が頭をあげて優を見ると、優も少しだけ顔をあげて小春を見ていた。
「ごめんなさい。でも、なんだかおかしくって」と優が言った。
「おかしい……、ですか?」
いったいなにがおかしいのか、よくわからなくて小春は首を軽くひねった。
「僕、高松さんとこうしてお話しする機会ができたら、いろんなことを話そうって、ずっと思っていたんです。でも実際に、今こうしてそんな機会をえたら、結局、なにも喋れなくって」
「それ、私も同じです」
小春は優の言葉を遮るようにして言う。
二人はお互いの顔を見て、にっこりと笑う。
「だから、ずっと緊張していたんだけど、緊張しすぎて、なんだかおかしくなってきてしまって。ごめんなさい。高松さん。気を悪くしましたか?」
「全然! そんなことありません」小春は言う。
そのやりとりで、なんだか不思議と心が柔らかくなって、小春は自然な感じで優と話をすることができるようになった。
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