相方がXXXなもんで
江田・K
「奥様はマ」シリーズ
その1 奥様はマ
スマホのアラーム機能が僕の耳元で鳴っている。
いつもの流れでアラームをオフに。
午前6時ジャスト。
朝は憂鬱だ。ひどく憂鬱だ。
これから最低8時間も労働に勤しまなければならないなんて。
いやだなあ。
いやだいやだ。すごくいやだ。労働なんて冗談じゃない。
などと思いつつ、半ば自動的に手はスマホを操作。各種ソシャゲのログインボーナスを回収している。一部ちょっとプレイするタイトルもある。そう、ちょっとだけ。
再度アラームが鳴る。
6時30分。
僕の朝の貴重な時間はこうしてあっという間に失われたのであった。
そんな空虚な気持ち、にじり寄ってくるそこそこの焦り。そろそろ起きねば。
確かなぬくもりで引き留め離してくれない布団に一時の別れを告げて、どうにかこうにかベッドから脱出を果たす僕。
体を起こし、広いキングサイズのベッドの隣を見ると、あるべき姿は無かった。
「今日もかふぁあ……」
語尾はあくびになった。眠い。
寝室を出て、フラフラとリビングへ移動する。
リビングの片隅に設置してある作業デスクに向かっている後姿を発見。
長い髪を後ろで無造作に束ねてデスクチェアに正座しているのが誰あろう、僕の妻である。
「おはよー……」
と声をかけると椅子をクルリと回して、バイオハザードのゾンビのような眼差しで僕を見た。
ざっくりとまとめただけ髪は結構ボサボサしている。眼鏡の奥の目の下にはガッツリ隈ができていた。なかなか朝からハードなビジュアルを高解像度でご提供いただけているわけであるが、徹夜してるんだからしゃーないよなあ、とは思う。
「あら、もう朝? おはよ」
声は結構元気だ。少し安心する。今日も生きててくれてありがとう。
「はい。誠に残念ながら朝です」
「んー」
と伸びをする妻。肩がバキバキいう音が聞こえる。関節が鳴るってレベルじゃねーぞ。そんな戦慄をおくびにもださず、
「お疲れさま。進捗は?」
「まあ、いつも通りということで。ギリギリだね」
「アッハイ。ソウデスカ。オツカレサマデス」
これ以上訊くものではないことを察知。修羅場ってんだな。今回も。
「いったん寝るー」
「おやす」
「おやす。そっちは、いってらっしゃい」
そう言い残すと、妻はおぼつかない足取りで寝室へ姿を消した。
一秒後、ぼすっ、とベッドに倒れ込んだ音がした。
昼夜逆転の生活。
僕の起きるタイミングで妻が寝入るのが、我が家の基本サイクルだ。
僕はちらりと作業デスクを見やる。
バカでかい22インチのペンタブレットに映るのは、コマ割りと下書きがなされた漫画原稿。
そう、奥様は漫画家だったのです。
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