1章 第4話~名前

さて、どうしたものか。今は女としてミヤキの前にいるがそのままの名前で言った方が良いだろうか。もし、自分と自分と同じ名前で伝えるとどう反応するか目に見えている。だが、このまま名乗らない訳にはいかない。取り敢えずそのまま名前を伝える。


「ホムラさんね、良い名前じゃない。でも、それを聞くとあの子が思い出しちゃうな」

「あの子?」

「あれ、ホムラさんもここの生徒なら誰もが知っていると思うんだけど。私は別のクラスだけど他のクラスでね貴方と同じ名前の子がいるんだ」

「へえ、そうなんだ」


やっぱり、その話になるか。けど我慢してそのままミヤキの話に合わせる。


「でね、そいつがクラスで浮いていてねいつも周りのクラス達に虐められているの。いや、あれは、ゴミだと言わんばかりの目であの子を見ていたね。酷い話よね」


それは、お前もその中の一人だろ。と言いたいところだけどグっとこらえる。


「でも、あまりにもかわいそうだったから助けようとしたんだけどね」


嘘をつけ、楽しんでいただろう。


「でも、結局出来なかった。私は怖かった、もしあの子を助けたとして、そのあとはどうなるの、もしかしたら次は私に目先を向いてくるかも知れない、そう思うと足がすくんじゃって。そんなとき、うちのクラスの一人が私に話しかけてきた、その話の内容は虐めになっている子を一緒に虐めを参加しないかという事」

「······貴方はその話に乗ったの?」

「うん、本当は嫌だったよ。最初は断った、でも、そうすると私を覗く目はまるでゴミを見つめる感じでこのままじゃあヤバいと思って参加しちゃった。でね、いざその子を虐めるとやっているとだんだんと楽しくなっちゃう私がいるの。おかしいよね、何で私はこんなにも笑っているの、嫌、誰か私を止めて欲しかった、この子を虐めたくない、助けたい、でも、出来ない、楽しい、笑いたい、私は私は私は私は私は私は私は私は」


パチン!と頬を叩いた。


「え」

「······もういい、十分伝わったから。でも、それを思っていたところで貴方がやったことは許されない。貴方は他の人達と同罪なの。それでもまだ、心の底から助けたいと思っているのなら、謝りたいなら、その子に会ったときに言いなさい。許してくれるか分からないけど」

「はい!·····でも、あの子が生きているか分からないし、会ったところで、またあの子に手を出してしまいそうで怖いの」


ミヤキは目に涙を浮かべている。

私は何をやっているんだろうミヤキの話が本当なのか嘘なのか分からなくなってきた。最初はミヤキも他の奴等と一緒で最低なクズ野郎だと思っていたのに。今、私は女だ、だから私が男であり虐められた本人が目の前にいることすらミヤキは知らないので、その私に嘘をつくのもどうかと思うが。


「大丈夫、その子は生きているわ、それにまた貴方がその子に手を出そうと言うのなら私が叱ってでも貴方を止めるわ」

「有り難うございます。でも、あの子が生きているか分かるのですか?」


だって、今は魔法少女をやっているからね。ここは勘と伝えておいた。


「ふふ、勘ですか、ちなみにどれだけ当たりますか」

「うーん、2割ぐらいかな」

「少ないじゃあないですかそれ」

「大丈夫、私を信じて」

「分かりました、信じて見ます」


何だかこうやって人と話すのは初めてでこんなにも楽しいとは思ってなかった。


「ホムラさんはあの子の事を知らなかったんですよね」

「え、ええ、そうね」

「なら、教えておきます。あの子が虐められているのは子の学校だけじゃあないです。多分、各地全体でも虐めにあっています。あの子は何処にいようが何処に隠れようが虐められます」

「それは随分と酷い話ね」

「はい、今はこんな風になってしまってあの子が生きているか分かりません。でも、もし生きているのなら私は今すぐにも助けてあげたい。あの子は今もたった一人で怯えているかも知れないから」


ミヤキは本当は心の底から私の事を思ってくれているのか。でも、本当かどうかまでは分からないが私も出来ることならミヤキを助けたい。でも、こんな状況で守りながら戦う事が出来るのか。


ピロン♪


「え、何に」


さっきスマホからなったみたいだが。私はスマホの画面を除いてみる。

そこにはミヤキの名前が乗っていて下にはハートとハートの中に数字の1が乗っていた。何だこれは。


「それは、いわゆる絆ランクだよ。話しかけたり慰めたりとかいろんな事をするとそれに応じた数値が上がってくるんだ。勿論上がれば上がるほど良いことがあるよ」


成る程、今はランク1なので出来ることはダッシュ機能が追加されたみたいだ。こうやってランクが上がると何かが追加されていくみたいだな。


「ちなみにダッシュするときに気をつけて欲しいのは銃の弾の補充と一緒で魔力が消費するので気をつけて。そう言う重要な情報は説明リストに乗っているから」


魔力を消費する何て幾らなんでもあんまりだよ。何のための機能があるんだ。ミチベエは仕方がないよ、そう言うシステムだからと言う。ちなみに魔力の残りの量を見る事もスマホで出来る。操作していくと画面にはメラメラと炎のように揺れながらうつっている。この炎が小さくなれば魔力が減っている証だ。魔力を回復するにはどうすれば良いのか。


「パラサイドを倒して宝珠を手にいれるんだ」

「パラサイド?宝珠?」

「パラサイドと言うのはゾンビのボスだと思えば良いよ。強さも桁違いだし何せ魔力を持っていて相当厄介な相手だよ。でも、それを倒す事で宝珠が手にはいる。宝珠は魔力を回復するのに必要なアイテムだよ」


そう言う事ね、でもそいつを倒すには結構厳しいだろう。本当に出来るのか?魔力はまだあんまり使っていないからまだある。ここは消費のしない刀で周りを倒していくしかないな。


「あの、ホムラさん、さっきから一人で別の方を向いてぶつぶつ言っていますけど大丈夫ですか」


そうだったミヤキにはミチベエの事が見えていなかったんだ。どうしよう、せめてミチベエの事を伝えた方が良いだろうか。


「今は止めた方が良いよ、それに君と話すときは念じれば僕と通話が出来るよ」


そう言うのは早く伝えてくれ全く。


「ごめん、ミヤキ、私は大丈夫だから。ほら、さっさとこの教室から出ましょう。ここはまだ火はまわっていないけどいつ燃え上がるか分からないわ」

「うん、分かった」


さて、守りながらの戦いか、果たしてミヤキを守りながら戦える事が出来るのか。

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