第2話 完!?

「おばさん、お邪魔しま~す!」

千尋と一緒にリビングへ。。。

「ヒロちゃん、もうちょっとだから待っててねェ♪」

台所から、おばさんのホワンとした平和な声。

「ママ、なんか手伝おうかぁ?」

千尋が台所に向かう。

「あら♪じゃ~ねぇ・・・。」という声と共に、おばさんが千尋に何やら指示を出す。

オレはそのままリビングのソファに座り、野球中継スイッチオン♪

しばらくすると、「ただいま。紘弥君、どっち勝ってる?」

おじさんが仕事から帰って来た。

台所からは、おばさんの『おかえりィ~♪』コールが届く。

おじさんは大の野球好きで、熱狂的な#$%ファン。

「おかえりなさい。今、2―1でリードしてるとこみたいです。」

おじさんは満足そうに着替えに行ったので、オレは台所へ行き、冷蔵庫からビールとコップを運ぶ。

程なくしておじさんが戻って来た。

これは千尋かオレ、手の空いてる方の担当。

「パパおかえり♪」

食卓に料理を運ぶ千尋が、おじさんに声をかける。

「はい、おじさん。」

コップを渡し、ビールを注ぎ込む。

「ただいま♪ おっ、ありがとね♪」

おじさんによると、この瞬間がたまらないらしい。

実際のところは、大人にならないと分からないのだが、表情から【たまらない】のは伝わってくる。

父さんにもするのだが、喜びつつも何故か父さんはいつも照れている。

ま、それはそれでいいのだ。

「え~!1-2で負けてんじゃん!」

こちら千尋は、なんとなく&%$ファン。

「このままいけば、守護神M・H登場で今日は父さんの勝ちだな。」

「いや、これは代打の神様K・Kからの逆転よ。」

しばしそんな戦況予想が伝わる中、

「パパ、チヒロヤ~、できたわよ~♪」

「だぁかぁら~! ママッ!、くっつけて呼ばないでよっ!」

「だって、まとめた方が楽じゃない♪」


千尋とオレを呼ぶ時、昔からおばさんは、いつもこの呼び方だ。

母さんが亡くなった時、おばさんは、泣き腫らした顔で「大丈夫、大丈夫よ。」、

と言って、オレを強く抱きしめてくれた。

父さんとおじさんがいうには、母さんとは、まるで仲の良い姉妹のようだったそうだ。

たぶん、そういう思い入れもあって、家族のように接してくれている。

そして、二人を呼ぶ時は必ず、【チヒロヤ】。

温かい。


そんなおばさんに千尋は抗議しつつ、彩鮮やかな食卓に着く。

おばさんの方は、いつものごとくやんわり流す。

おばさんのあの技があれば、オレも千尋に勝てるのではないか?と思うのだが、

体得には、何百年かかることか(汗)。

おじさんは、そんな2人のやりとりをいつも楽しげに見ている、ユニークで優しい人。


おじさんとおばさんは共働きで、おじさんは帰りが遅い時がよくあるし、おばさんは夜勤もあるので生活リズムが大変そう。

そのため、家族全員で食卓を囲む機会もまちまち。

「おー♪うまそうだなぁ♪」おじさんはビールをお供に着席。

オレはいつも通りおじさんの隣に陣取り、千尋を目の前に箸を持ち、準備万端!

「それでは、いただきまーす♪」

全員で合唱。

それと同時に、テレビでは、「打った!打ったー!これは大きいっ!、

どうだ?どうだ!?・・・入ったぁー!K・Kの同点ホーーーム ランッ!」という実況。

おじさんはテレビ画面にくぎ付けになってしまったため、テーブルの下から例のごとく、大地母神様のニコ(^^)♪やかなる、慈悲深いすねへの蹴り一発。

おじさん、「イテッ!」と共に間髪入れずの「ゴメンナサイ(涙)。」

「ほらね、パパ。アタシの言った通りになって来たでしょ?」と、千尋は一番大きなエビフライを手中に収めながら勝ち誇った。

「い、いや、まだ振り出しに戻っただけだよ…。」

おじさんの、か弱い抵抗・・・。

おじさん、ガンバっす(・・!)〃。

そんなこんなで、ワイワイ♪、ガヤガヤ♪、おばさんの至福の手料理をみんなで堪能した。

そして千尋の予言通り、食事が済む頃には、おじさんが肩を落とす結果になったのであった・・・合掌(-。-)。


後片付けの手伝いも終わり、リビングで千尋とテレビを少し見ていたが、風呂に入るということだったので、オレは帰ろうとしたその時、思い出した。

「あ、チー。この間、銀の翼の12、13巻持って行った?」

「?・・・! あ~、部屋にあるわ。持って行っていいよ。」

という言葉を残し風呂へ。

食卓で書き物をしていたおばさんは千尋に、「ヒロちゃんの勝手に持ち出してェ。」と、小言をいったが、千尋は全く気にせず。

『おばさん、いつものことなんで大丈夫です。』と、思いつつ、千尋の部屋へ漫画を取りに行く。

2階に上がり、一番端の部屋のドアを開ける。

「あいかわらず電気付けっぱ。」

部屋に戻った時に、真っ暗なのが嫌いらしい。

千尋の部屋はいつも綺麗に整理整頓されている。

さて、漫画は?・・・あった♪

ベットの横にある、サイドテーブルに2冊重ねて置いてあった。

「?」漫画の奥側、枕の方を向くように、小さな写真立てがあった。

「こんなもん、あったっけ?」

ひょいと拾い上げ、その正体を確かめる。

「おぉ!懐かしい・・・。」

それは、幼稚園の時に一緒に撮った、千尋との写真だった。

二人とも笑顔でピースサイン。

オレ、ちょっと引きつってる(笑)。

「あー、これ覚えてるわぁ…。」

母さん亡くなってふさぎ込んでた頃、千尋がめちゃくちゃまとわり付いて来たんだった。

そして、事あるごとに「写真撮ろうー」・「笑おう」って、言ってた時だわ。

今考えれば、千尋なりに気、使ってくれてたんだろなぁ・・・。

というようなことをほのぼの考えていた矢先、、、

ダッダッダッダッダッ! バンッ!!

開いているドアを右手で叩いたあとギギギ~ッ!っと爪を立て、頭(こうべ)を垂れて肩を大きく上下に揺らし、その長い黒髪を前にバサッと・・・・(固)。。。

どこかでお目にかかりましたか??(汗汗)。

・・・画面から這って出て来ないでね(T。T)。。。

そして貞、、、×、千尋は、オレの目の前に一気に歩を進め、グワッ!と顔を上げた・・・が、髪が邪魔で見えなかったようで、歌舞伎の毛振けぶりごとくブワサッ!と後ろへ。

(怯)…わざと髪、ぶつけましたよね??(涙)。

そして、

「見たわね?」


「え″?・・・(固)。」


「見たわよね?」


「・・・何″を?(震)。」


「あんたが今、手に持っているものよ。」

「・・・これが、何?」

「だから、見たんでしょ?」


「・・・写真?」


「そう。」


「・・・見た。」


「・・・・・。」

貞、、、×、千尋は目線を床に、固まった。


ややあって、

「・・ぃ?」


「え?・・・。」


「・・・わるい?」

「何が?」

「だから、あんたとの小っちゃい頃の写真、飾って悪いかって聞いてんの!」

『はて?何いってんだ?こいつ??』


「なんで、悪いってなるんだ?」

「・・・だって、気持ち悪いでしょ?」

なぜ様子を見ながら上目使い?(汗)。

もしや、呪う気ですか!?(汗汗汗)。

と、とにかく、正直に言おう。


「いや、嬉しかったよ。」

「そーよね。やっぱり気・・・ぇっ!?」

千尋がキョトンとしている。

構わず伝えてしまおう。

「だって、チーがこんな昔の思い出、大切にしてくれてるなんて知らなかったから。」


「・・・ぅん。」

チー、心なしか今、身長縮んだか?(驚)。

「これ、ずっとあったのか?気付かなかったなー。」

「ヒロが来る時は、いつも隠してた。」

「?なんでだよ?オレにもこの写真くれよ。部屋に飾っておく♪」

チーが石像になった。

どうやらオレは、石化の魔法が使えるようだ。

・・・石化したヤツって、焦点合わないんだな。フムフム。


「・・・ホントに?」

ぁ、戻った。

「?うん。もちろん♪ 大切な思い出じゃん!」


チーの顔が弾けた。

「じゃあ、写真屋さん行って来るね!ていうか、ヒロも一緒に行くよ!」

「お?(汗)、おぅ♪」

チーは突然、ご機嫌になった。


なんだったんだ? あのおどろおどろしさは・・・(悩)。


「ところで、チー。」

「なに?」

「いいっちゃいいんだけど、なんでそんな恰好なわけ? なぜにおっさんのように首からタオルひっかけて、上半身ブラいっちょなんだ?」


「・・・・・。」


そー、この瞬間に伝説が始まった。

千尋(以下、乙女戦士)から放たれるオーラは、先ほどのおどろおどろしさが児戯(じぎ)に等しいと感じられるほどだった。

乙女の羞恥心(しゅうちしん)を活動源に変えて、オレ(以下、澱(よど)みの元凶)を滅殺しようと覚悟を決める、凜(りん)とした姿がそこにはあった。

澱みの元凶は、声ともつかない声で語りかける・・・。

「アナタハソコニイマスカ…?」と。

そして気付く。

「ア、オルスデスネ…(T^T)。」、と。

乙女戦士は、ゆっくりと重心を下げつつ、両手をきっちりと握り込み、脇を締めると、右足を一歩後ろへ。。。

そこから体幹のブレなど一切ない状態で、上半身をひねり込む。

呼吸を整えた後、「でやぁーーーっ!」という掛け声の元、左足を前へ大きく踏み込むと、骨盤の開きを最大限に活かし、溜め込んだパワーを一気に放出しにかかる。

その胸部の開きは、澱みの元凶にとって消滅を想像するに難(かた)くなかった。

(この時、澱みの元凶は、『スレンダーな割に育ってんな。』、と、過ぎる。)

乙女戦士は、勝利を確信しつつあるようだが、気を緩めることなく、肩甲骨を滑らかに可動し、右の肩、肘、次いで拳を的確に配置、澱みの元凶を捉える。

整えられたフォームは、寸分違わず澱みの元凶(泣)の左頬へ到達し、その美しさからは想像もできないほど、欲しいままに澱みの元凶をむさぼった===========!

鈍い感触と共に、骨伝導音が澱みの元凶の頭に響き渡る。

乙女戦士の拳は、放物線を描きながら、左下斜め45度の軌道へと華麗にフィニッシュ!

渾身の一撃で、澱みの元凶は後ろの壁に激突するその刹那、思った。

『あぁっ。最期って、どうでもいいこと考えるんだな・・・。』と。

そして、消滅していく澱みの元凶のもとには、煌(きら)びやかな天使達がゆっくりと舞い降り、優しく微笑むのであった。。。           

                      

                                  

                                 完!?

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