残されたパーツ
勝利だギューちゃん
第1話 女の子
いくつものパーツを組み合わせて、ひとつの絵を完成させる。
だがこのパズルは、ひとつでもパーツが足りないと完成しない。
未完成のまま終わってしまう。
「今日も、絵を描いてるの?」
「ああ」
偶然知り合った女の子に、声をかけられる。
最初は、挨拶程度だったが、いつしか日課となった。
まあ、平日の昼間から公園で絵を描いていれば、不思議に思うだろう。
特に、年頃の女の子なら・・・
「お兄さん、絵上手いね」
「そう、思うか?」
「うん」
「そっか・・・」
俺は、生返事をして筆を走らせる。
「お兄さんは、自分の絵を、上手いとは思っていないんだね」
「ああ」
「どうして?」
「俺の絵には、足りない物がある。それを見つけるまで完成しない」
「よく、わからないけど、そういうものじゃないかな」
女の子の言葉に、俺は筆を止める。
「私はまだ、お兄さんよりも、人生経験が少ないからわからないけど」
「けど?」
「お兄さんは、誰のために絵を描いてるの?趣味?」
「好きだから描いている。だが・・・」
「だが?」
「評価されたくないと言えば、ウソになるな」
女の子は笑いだした。
「なら、当たり前よ。お兄さんが探しているものは見つからないわ」
「えっ」
「生意気いって、ごめんね」
「いや、いいんだ。全く君の言うとおりだよ」
俺はあらためて筆を走らせた。
「ねえ、私のために描いてみて」
「君のため?」
「うん。もちろんお兄さんの好きな物でいいよ。
そのかわり、お兄さんのためでなく、私のために描いて」
「いいのか?」
「でも、今はやってるものとかはダメだよ、お兄さんの好きな物で」
「俺の?」
「後、私の絵もだめよ。そんなにかわいくないから」
この子は、それなりにかわいいと思う。
つまり、ごまかすなと言う事か・・・
「わかった。描いてみる。締め切りは?」
「一週間」
「一週間?」
「来週また来るわ。それまでに描いておいてね」
「で、報酬は?」
「私とデート」
「遠慮しておく」
女の子は、笑いながら去って行った。
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