リスト-3- 空を<見上げって・見下ろして>
食事を終えて外に出たボクは少しぼんやりしていた
「どうしたの?」
少し心配そうに見つめてくるメルにボクは言う
「いや、まだ頭がぼんやりしてて・・・」
そう、まだボクの意識がハッキリしないも所がある。なんだか見える物全てに靄がかかっている様な感じだ
「もう、暗くなってきたな・・・・・」
何も無いボクに行き場所なんて無いし、寝泊り出来る場所を探さないと・・・
「泊まる場所?」
「え、うん」
考えた事を声に出してしまったのだろうか?
「こっち…」
「あ、ちょっとッ」
メルに引っ張られて走るボク。どこか心当たりがあるのだろうか? まさかメルの家!?さすがにそこまでお世話になるわけには! だがぼんやりしたボクには成す術がなく・・・
「ここ・・・」
「え、ああ・・・」
ボクはホテルに案内された。そうだよな、泊まる場所に案内するならホテルだよな
「でもメル、ボクお金が…、居ない!?」
辺りを見渡すがメルの姿は消えていた
「まいったな・・・」
地元の人みたいだし迷子って事もないだろう。ホテルに人が居れば相談できるかもと思い、ボクはホテルのロビーに入ると、ホテルマンらしき人物が居たので話しかけてみた
「あの、すみません」
「はい、ようこそフェアリーランドホテルへ。ご宿泊ですか?」
「いえ、実は迷子になってしまって」
「迷子? 良ければ道をご案内いたしましょうか、どちらまで行くご予定だったのでしょう?」
「いやその…、実は自分の事も分からなくて・・・」
「ふむ・・・、少々お待ちを」
ホテルマンはボクの周りをぐるりと回りじろじろ見た後、どこかに電話をかけていた
「警察呼ばれるのかな…」
今の状態じゃあ仕方ないか、警察に保護してもらえばボクの身分も分かるかも
「―――さま」
「え?」
ホテルマンに話かけられたがとっさの事で反応出来なかった
「――――様ですよね?」
「あ、はい!」
ボクの名前を呼ばれたので力強く答えると、ホテルマンは姿勢を正しこう言った
「あなた様のお忘れ物を預かっております、どうぞお受け取りを」
「忘れ物?」
渡されたのはメルのチョーカーと似たものだった。ボクはそれを手首に撒くと、それがまだ使える物だと直感する。これなら…
「あの、宿泊したいのですが」
「おお! ありがとうございます。 しかし、残念ながら全室・・・」
「満員なんですか?」
「いいえ、全室空いておりますよ。当ホテルといたしましては、非常に残念な事ですが…」
このホテルマン、意外にフランクな人なのかもしれない
「そうですか。じゃあ一番安い部屋を一つ」
「はい、ではプレジデンシャルスイートにご案内いたします」
「一番安い部屋って言いましたよねボク!?」
「他の部屋は準備中でして、事実上、開いている部屋はその一室となっておりまして」
「何でそんな事に?」
「経費削減に一環でして、他の部屋まで手が回らないのですよ。なにせお客様が来られたのも200年ぶりですから当ホテルの経営も火の車で。あ、代金の方はお客様のご希望通りお安くご提供いたしますのでご安心を」
さらりと変なジョークを言うなこの人…
「じゃあその部屋でお願いします」
「はい、残りのお忘れ物もこちらに届き次第、お部屋にお届けいたします」
「はあ…、どうも」
ボクは最上階の部屋に案内され、部屋に入ると
「それでは、ごゆっくりとお寛ぎください」
ホテルマンはそう言い残して静かに去ってしまった
「あ、忘れ物」
部屋にはすでにボクの忘れ物が届けられていた
「どれどれ…」
ボクは忘れ物を確認し何もなくなっていないことを確認した。すると安心したのか、どっと疲れが出たのでベットに横になる
「ふう・・・・。そうだ、星」
天井を見て、ふとそんな事を思った。星を見れば現代位置のおおよその場所が分かるかもしれない
「さっそく見てみるかッ」
ボクは重い身体を起こしベランダに出て空を見上げた。その時
「あ・・・・」
輝く星空を見てボクは、その光景に言葉を失う
「・・・・・」
そして微かだがどこからか歌声が聞こえてくる
「メル?」
下を見ると、丘の上で祈りを捧げる様に歌っているメルが居た。その姿は神秘的で、まるで彼女がこの星空の一部の様に輝いている様に感じた
「良い歌だ・・・、でも・・・」
ボクはもう一度空を見上げる。夜空に輝く一つだけ、一番大きい星・・・
「月か・・・」
そう、月のはずだ、それ以外にはないはずだ、しかし・・・
「月は、あんなにも大きくて・・・、蒼いものだっただろうか?」
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