沖縄のユタ(1)

 來夢は将樹と一緒に沖縄に飛んだ。

 

 東京はすっかり秋も深まってきているというのに沖縄はまだ明るい夏が広がっていた。


 沖縄に住む叔母に電話して教えてもらったユタは那覇市内に住んでいた。


 そこにあったのはどこにでもあるようなアパートで1階にはコンビニが入っていた。


「今なん時?」


  将樹は腕時計を確認する。


「2時15分」


 約束の時間は3時だった。


 時間に厳しい人だと叔母から聞いていたがずいぶん早く着いてしまった。


 周りを見回すとアパートの斜め向かいに喫茶店らしきものがあった。


 2人はそこに入って時間を潰すことにした。


 昭和にタイムスリップしたような喫茶店でアイスーヒーを注文する。


「その人ってすごいの?」


「分かんない、別に叔母さんがみてもらったわけじゃないらしいけど、なんか噂ではすごいらしい」


「へえ」


 将樹はアイスコーヒーにささってきたストローを外して直接グラスに口をつけた。


「すごいってなにが?」


 いきなり隣に座っていたおじいさんが話しかけてきた。


 テーブルには新聞が広げれている。


「俺たちユタに会いにきたんです」


 答えたのは将樹だった。


「ユタ?この辺にユタとかおったか?」


 おじいさんは店の奥にいる年配の女性に声をかけた。


 エプロンをした店の女性が奥から手を拭きながらやってくる。


「わたしの叔母が沖縄に住んでいてなんか噂ではすごいと聞いたんですけど」


「ユタねぇ、この辺でいたかしら?なんて名前の人?」


 來夢は叔母から聞いたユタの女性の名前を告げた。


「キミエかい」


 おじいさんは大口を開けて笑った。


 前歯が1本ない。


「キミエがユタであるもんかい、なぁ」


 年配の女性はおじいさんに曖昧に頷いて申し訳なさそうに來夢たちを見た。


「でも叔母はすごい人だって」


「キミエはただの婆さんや、いやただの婆さんやなくてちょっと気がふれた婆さんや」


  來夢はすがるように年配の女性を見た。

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