新たな事実(3)
「あんたが合意と思った少女たちは合意でもなんでもないんだからね」
人混みに消えていく小さな少女の背中。
冷たいアスファルトの上で消えた雪也の命。
怒りと憎しみで來夢の体は燃えるように熱くなった。
自分の体が思いだけで凶器になれるのなら、このまま男に突進したい。
「3年前の4月16日!」
來夢は叫んだ。
「は?」
「あの日」
「なんだよその4月16日って」
男は面白いものでも見るように來夢を見下ろしている。
「あの事件……4月16日のあの」
來夢は喉を詰まらせる。
「4月16日の事件?」
男の表情がわずかに変わった。
「それってあのことか?」
男はまるで他人事のようにぼそりと呟いた。
「あんたあの事件となんか関係あんの?さっきから訳分かんないこと言ってると思ったけど」
男はまじまじと來夢を見た。
「まさかあの事件の少女強姦犯が俺だと?」
來夢は男を下から睨みつけた。
「犯人は自殺しただろうが」
「違う!雪也は犯人じゃない」
男は來夢の前にしゃがみこんだ。
「やっぱり、なにあんたあの自殺した男のなに?これとか?」
男は小指を立てた。
そして勝手にひとりでで納得する。
「そっかそれは気の毒にな、いろんな意味で」
「気の毒って自分が」
「なに、本当に俺が犯人だと思ってんの?馬鹿じゃね?俺じゃねーよ、まじ勘弁してくれよ」
新聞に小さく載った雪也の記事。
多くの人は素通りしてしまうようなそんな小さな記事。
たとえ読んだとしてもすぐに忘れ去られてしまうような小さな記事。
そんな小さな事件を知っているということが、この男があの事件と関係ある証ではないか。
その來夢の考えを男は次の言葉でさらりと打ち消した。
「事件のあったあの場所って仕事でよく行く場所なんだよね、それと4月16日って俺の誕生日でさ、自分の誕生日になんかそんな事件が起こって、やだなぁって、だから今でも覚えてるけどさ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます