あの日の真実(6)


「そんな……」


 なんとずさんな捜査なのだ。


 警察は最初から雪也を犯人だと決めつけ、少女からまともに話も聞かずに雪也を少女強姦の犯人にしてしまったというのか。


 少女が雪也の死を知らされたのはずっと後になってかららしかった。


「だからあたしのせいじゃないよ、お姉さんの彼が死んじゃったのは」


 來夢は立ち上がった。


「ちょっとアップルパイ買ってくる」


 レジの前にできている列には並ばずに來夢はトイレに入った。


 トイレから聞こえてきた叫び声に人々は振り返る。


 それでもしばらくするとまた何事もなかったかのように店内はざわつき始めた。


 來夢はトイレの低い天井に向かって大きく口を開け喉を震わせた。


 声にならない叫び声を何度も上げ続けた。


 雪也!


 眩い強い光が差し込む。


 真っ黒なトカゲの尻尾がジュッと音を立てて消えた。






 來夢はあることに気づく。


 それではどうして雪也は死んだのだ?


 上着のポケットに幼女の写真が入っていたのはなぜだ?


 ポケットに入れられた?誰かが入れた?雪也のポケットに?なぜ?


 まさか。


 トイレの鏡に映る自分と目があった。


 雪也は罪を着せられた?そして……。


 唇が動く。




 コ・ロ・サ・レ・タ。




 來夢はトイレから飛び出した。


 もしそうだったとしたら犯人はその男だ。少


 女を犯した男が雪也に罪を着せて殺したんだ。


『來夢、死ぬときは一緒だよ』


 雪也は自分を置いてひとりで死んでしまったんじゃない、雪也は殺されたんだ。


 席に戻るとそこに少女はいなかった。

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