あの日の真実(2)


「最低だよわたし」


 少女はまじまじと來夢を見た。


「なに開き直ってんの」


「ねぇ、雪也を知ってるんでしょ、本当のことを言って」


「本当のことってなに?本当のことはもう知ってんじゃん。それともわたしの彼はそんな人じゃないとか思ってんの?」


 そうだ。


 來夢はずっと受け入れられないでいるのだ。


 雪也が少女愛好者であったということを。


 自分を抱かなかった理由がそれだと言うことを。


 それを受け入れてしまうと雪也と自分の思い出のすべてが嘘になってしまう。


「そうだよ」


「ふーん、おめでたいねお姉さん」


 少女は鼻で笑った。


 ねぇ、ホットアップルパイ食べたいんだけど、と少女は言った。


 來夢はバックから財布を取り出す。


「お姉さん」


 少女は小さく千切った紙ナフキンを手の平の上に集めるとふぅと息を吹きかけた。


 テーブルの上と汚れた床にそれらはひらひらと落ちた。


「知ってるよその人、お姉さんの彼、あたし知ってる」


 やっぱり。


 鼓動が早くなる。


「それで……雪也は」


「よく覚えてないんだよね、あたしお酒飲まされてたから」


「雪也があなたにお酒を飲ませたの?」


 少女は無言で首を横に振った。


「じゃぁ」


「お姉さんの彼じゃないよ、あたしをヤッタのは」


 雷で打たれたような衝撃が走る。


 來夢は腑抜けたように椅子に腰をおろした。


 何か言おうとしたが言葉が出てこない。


「お姉さんの彼はそういう趣味の人じゃないよ。あたし達そういうの見れば分かるから」


 あの日少女は3人の男たちと一緒にいたと語り始めた。

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