あの日の真実(1)
來夢は自分のスマホを取り出し少女の顔の前に突き出した。
躊躇がないわけではなかった。
でももしかしたらこの少女かも知れない。
それに賭けた。
「この男の人知ってるでしょ」
少女は体を乗り出し画面を覗いたが、すぐに椅子にもたれる。
「知らない」
そう言ってたたんだ紙ナフキンを広げると小さく千切る。
画面の雪也が來夢に微笑みかける。
「誰それ、お姉さんの彼氏?」
「うん、もういないけど」
「なに別れちゃったの?」
「死んだの、自殺」
少女は全く動じた様子を見せなかった。
「なんで自殺なんかしたの?」
來夢はずっと封印していた言葉を口にした。
「少女強姦の罪に問われるのを恐れて」
「ふーん」
少女は興味なさげに頷いた。
2人の間にしばらくの沈黙が流れる。
「で、なんであたしにそんな話すんの」
「見えたから、あなたに触れたとき雪也の顔が、わたし見えるんだ」
來夢は自分の能力のことを少女に話した。
少女は來夢の話を聞いている間もずっと紙ナフキンを千切っていた。
來夢の話を馬鹿にする態度を取るでもなく、かと言って信じているようでもなく、少女はその話に興味がない、それだけのようだった。
少女は來夢の話を聞きながら明らかに他のことを考えているように見えた。
「それでお姉さんはあたしがその被害者じゃないかって?お姉さんのその自殺した彼がヤッタ女の子じゃないかって?もしそうだったとしたらそれでなにが聞きたいわけ?でもさ、もしあたしがそのことでものすごい心に傷を負ってたらどうすんの?お姉さん自分がやってること分かってんの?それともあたしはこんな感じだから何しても大丈夫だと思ってるとか?どうせ普通の子じゃないから。それって超サイテーじゃない?」
その通りだ。
自分のやっていることは最低だ。
でも來夢はどうしても知りたいのだ。
トカゲの尻尾の正体が。
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