あの日(6)


 來夢はペンを取り少し考えると『最低週に2回はジムに通う』そう書いた。


 ずっと運動らしい運動をしていなかったので、 今日は筋トレとそのあと少しウォーキングをすることにした。


 とは言ったもののトレーニングマシーンの使い方がよく分からない。


 見よう見まねでなんとなくそれらしい動きをやってみる。


 本当に筋肉に効いているのか疑わしい。


 腹筋のマシーンをやっているとき横にいる男と目が合った。


 何度か同じ男と目が合う。


 來夢のことをじろじろ見ているというより、マシーンの順番がたまたまいつも來夢のあとで、 そのタイミングを見計らっているといった感じだった。


 30分ウォーキングをしたあとサウナに入りゆっくりと湯船に浸かった。


 シャワーブースで丁寧に体と髪を洗う。


 泡立てた石鹸を直接手で撫でるようにして体を洗っていく。


 太ももの内側に触れた時なぜかさっきの男の視線を思い出した。


 次に男の腕に浮き出る筋肉の筋と青い血管を思い出す。


 細い自分の女の指が男の太い指に変わる。


 熱をもった男の指は來夢の内腿をゆっくりと撫で回した。


 そして遠慮なく内腿を這い上がってくる。


 男の指がその指よりも熱く火照った來夢の中心に差し込まれたとき來夢はぶるりと体を震わせた。全身の毛穴がぽつぽつと突起する。


 指が動くとぎゅっと力が入る。


 締めつけられた指がもがくとたまらなくなって声が出た。


 声は水とともに排水溝に流れていった。


 シャワーブースの外で声がした。スタジオクラスが終わったのか、たくさんの人が流れ込んできたのが分かった。


 來夢はブースを出た。


 髪を乾かしている間も服を着ている間も、中途半端に投げ出した下半身は疼いたままだった。


 もっととさっきよりも強く欲していた。


 熱くとろりとしたものがつけたばかりの下着を汚した。

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