あの日(2)

 雪也のコートのポケットには数枚の写真が入っていた。


 それらにはケバケバしい化粧を施した少女の裸が写っていた。


 そして雪也が飛び降りた同じ屋上にアルコールを飲まされ泥酔した少女が半裸の状態で横たわっていた。


 少女の体の中から精液が検出された。


 少女は13歳になるまであとふた月だった。


 來夢は事情聴取のため警察に呼ばれた。


 雪也の性癖について事細かに質問された。


 來夢は何度も同じことを繰り返した。



「何かの間違いです。雪也にそんな趣味はありません」


 來夢自身に言い聞かせる言葉でもあったし、雪也に触れた時、1度足りともそんな映像が浮かんできたことはなかった。


 來夢は自分の手に確信を持っていた。


 男性の警察官が部屋を出て行って女性の警察官と2人きりになった時、彼女は寄り添うように來夢の横に座ると囁くように聞いてきた。


「彼のセックスはノーマルだった?彼はあなたの体にちゃんと興奮してた?つまりちゃんと勃起してた?」


 そのとき來夢の中で何かが壊れた。


 來夢は悲鳴のような声をあげた。


 叫ぶように泣いた。


 女性の警察官が來夢の背中をずっとさすっていた。

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