幕間 御門さん、または壮一&琴音side
第60話 御門さんside 悪巧み
※ここからしばらく旭が不在の為、視点が三人称になります。
ここは桜崎学園の敷地の一角。
旭と別れた後、テントを壊してしまった事で先生にこってり油を絞られた御門さんご一行。
鳥さんと牧さんは疲れた様子であるが、ただ一人御門さんだけは荒れるに荒れていた。
「きいーーっ!」
顔を真っ赤にしながら、まるで獣のような声を上げている。御門樹里、見てくれは中々の美人なのに、こういう事をするから彼女は男にモテないのである。それはさておき。
「悔しいですわ悔しいですわ悔しいですわーーーッ!どうして、どうしてわたくしがあのような屈辱を!ああっ、思い出しても腹が立つ!は・る・の・み・や・あ・さ・ひ・めーっ!」
噛み締めていたブランド物のハンカチが、ブチブチと音を立てて引きちぎられていく。しかしこれをもったい無いと突っ込む余裕がある者などいない。鳥さんも牧さんも、彼女の怒りを抑えるのに手一杯なのである。
「御門様、どうかお静まりください」
「このままでは御門様の聡明なイメージが崩れてしまいます」
誰かがこの会話を聞いたらこう思ったであろう。元々そんなものは無い、と。
そして御門さんは聡明さの欠片も無い態度で怒鳴りちらす。
「お黙りなさい!」
「「はい、御門様!」」
「わたくしのイメージはそう簡単に崩れるものではございません」
「「その通りです御門様!」」
「ハッ、イメージと言えば春乃宮さん、もしやこれを機にイメージアップを目論んでいたのでは?借り物競争でゴールした瞬間など、拍手が起きていましたから。学校行事をイメージアップのダシに使うなどと、なんてあざといんでしょう」
もちろん旭にそんなつもりなど無い。全て御門さんの妄想の産物である。もしここに旭がいたらさぞかし迷惑に思ったに違いない。
「そうですねえ。真偽のほどはともかく、イメージは良くなったみたいですよ、春乃宮さん。美しい女の友情だって、皆言ってましたし」
「そう言えば文化祭の時は風見様とカップルと騒がれましたっけ。なんて羨ま…いえ、なんでもございません」
咄嗟に誤魔化すも、御門さんの不機嫌は止まらない。
「ああああああああああああアアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーッ!」
「御門様、お気を確かに!」
「どうか、どうか落ち着いて下さいませ!」
「これが落ち着いていられるものですか!姑息な手を使ったとはいえ、校内での春乃宮さんの株は確実に上がっているのでしょう。もし、万が一に春乃宮さんがわたくしの株を追い越して高い評価を受けるような事があれば……そんなの耐えられませんわ!」
「ご、ご安心ください御門様!」
「春乃宮さんが御門様を追い越せるわけがございません」
元々春乃宮さんの方が高評価にございます。などと二人が思ったかどうかは定かではない。しかし後に続きそうになった言葉を必死で飲み込んだ様子が見てとれた。
「ええい、忌々しい春乃宮さん。どうにかしてギャフンと言わせてあげたいですわ」
「そう言われましても…」
「実際にギャフンなんて言う人がいるとも思えませんし……」
鳥さんも牧さんも、いい加減お手上げ状態。
このまま機嫌が治るまで放置するしかないかと諦めかけたその時。
「ん?そうですわ。アレをああすれば……」
御門さんが何かを閃いた。いや、閃いてしまったと言うべきだろうか。
嫌な予感がする。口にこそ出さなかったものの、目をあわせてそれを確認し会う鳥さんと牧さん。そして不適な笑みを浮かべる御門さん。
「そうです、そうすれば良いのですわ。さすがわたくし。おーほっほっほ!」
「あの~御門様」
「今度はいったい何を企んで……いえ、思い付かれたのでしょうか?」
「よくぞ聞いてくれました。鳥さん牧さん、耳をおかしになって」
二人に何かを伝える御門さん。彼女の目はさっきまでの怒りが嘘のように、キラキラと輝いている。そして全てを話終えると、満足そうにドヤ顔を浮かべた。
「どうですか?どうですかどうですかどうですかーー!この完璧な作戦は!これで春乃宮さんに復讐……もといギャフンと言わせることができましてよ。おーほっほっほ!」
生き生きと高笑いをする御門さん。しかしそれに引きかえ、鳥さんと牧さんは何やらドン引きしている。二人とも恐る恐るといった様子で、御門さんに物を申し始めた。
「あ、あの~、御門様。ですがそれは」
「さすがにやりすぎなのでは?春乃宮さんが気の毒にございます」
鳥さんも牧さんも人の子、いくら御門さんの提案とはいえ、それがあまりに度をこしていたら意見はするのだ。まあもっとも。
「……やるんですのよ!」
「「はい、御門様!」」
所詮この二人が御門さんに逆らえるわけがないのだ。
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