第7話 ビギナーとベテラン

――V-S-Cブロック


「みなさん、すごいな……」


 通信を聞いていたタイガがつぶやく。


「タイガ、落ち着け。俺たちもさっさと終わらせるぞ」

「は、はい!」


 タイガは震える手で操縦桿そうじゅうかんを握った。


「こちら【アイビス】、3個の隕石を確認。排除を行う」


 本部への連絡を終えると、タイガに声をかける。


「タイガ、お前も司令室へ連絡をしておけ。連絡が終わったら、仕事の始まりだ」

「はい!」


 タイガは焦りながら司令室と通信を繋いだ。


「こ、こちら【フェザント】、3個の隕石を確認しました。排除の開始をします」

〔了解。2人とも頼むぞ〕


 フェルウェインはレーダーを見つめながらタイガに声をかける。


「オーケー、タイガ。仕事を始めよう。常時プライベート通信回線を開いておく。何かあったらいつでも声をかけてくれ」


 フェルウェインはタイガに声をかけると、静かに操縦桿を握った。


「タイガ、レーダーを見ながら隕石の位置を確認するんだ。冷静に考えれば、そう難しいことはない。学校でやったシミュレーターみたいなものだ」

「はい! レーダー……隕石の位置……」


 タイガは緊張しながら、順番に確認をしていく。


「俺も始めるか。新人に手本を見せてやらんとな……!」


 【ヴァジュラ】の乗員には見せたことのない顔がそこにはあった。慣れた手付きで機体を操る。機体に搭載されているミサイルを隕石に向けて放つ。レーダーを確認すると、隕石の反応は消失していた。


「よし! タイガ、そっちはどうだ?」

「こちらは今、照準を合わせ終わったところです」

「そうか、通信のタイミングが悪かったな」

「いえ、大丈夫です!それでは……撃ちます……!」


 タイガは意を決してトリガーを押す。機銃の振動が機体に伝わり、タイガの体を揺らした。弾丸は暗闇に消えていく。


「よっしゃ!」


 レーダーから隕石の反応が消失した。


「タイガ! よくやった!」

「ありがとうございます!」

「こちら【アイビス】、隕石の排除が完了した。帰還する」

「こちら【フェザント】、隕石の排除が完了しました。帰還いたします」

〔2人とも良くやった。気をつけて帰ってきてくれ〕


 イグアスは小さくガッツポーズをしながら通信を終えた。

 本部への通信が終わったあと、タイガは異変に気づいた。


「フェルウェインさん、あれは何ですか?」


 タイガが隕石のような物体に機体を近づける。レーダーに隕石の反応は無い。


「なんだ……」


 フェルウェインは数秒間、思考を巡らせた。そして答えが出た。


「タイガ! すぐに離れろ!」

「え……? それは……」


 隕石と思われた物体は変形をした。丸みのある形から、大きなヒトデのような星型になった。そして【フェザント】を包み込んだ。


「うわぁぁぁぁ!! なんです!? これ!?」

「くっ!」


 すぐさまフェルウェインは機銃を発射した。星型の異物に命中すると、【フェザント】を包む力が緩んだ。


「タイガ! ブーストで直ちに離脱しろ!」

「は、はい!」


 パニックになり、ブースト起動ボタンが見つからない。


「あれ……どこだ……。ここらへんのはずなのに……!」


 実際はタイガの視界の真ん中にブースト起動ボタンがあった。しかし、タイガにはそれを認識することはできなかった。その状況を瞬時に察したフェルウェインは行動を開始した。


「しょうがないか……!」


 自身の機体のブーストを起動した。向かう先は【ヴァジュラ】……。ではなく、星型の異物。


「うらァァァァ!」


 ブーストで加速した機体で直接体当たりを仕掛けた。体当たりの衝撃で星型の異物も吹っ飛ばされた。


「タイガ!」

「あった……! ブースト起動……!」


 推力偏向すいりょくへんこうノズルが閃光を放つ。【フェザント】は一瞬にして異物との距離をとった。


「よくやった、タイガ」

「フェルウェインさん!」


 星型の異物の標的は【アイビス】に変わっていた。大きく体を広げ、機体を包み込もうとしていた。

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