ごじゅっ粒め。

 ここ最近、ネイン君のことが目にちらついている。

 → https://kakuyomu.jp/users/nikaseni

 出あうたんびに「鮎」モナカを差し出すのだが、すぐにポイってされる。

 ケンカを売っているのかな?

 友好の印をポイポイされるってことは、そういうことなのかな?

 そこへ天の神登場。

「相手は? 年は?」

 ガキだ。

 ちょっとやさぐれたキャラで答えるわたし。

 そう、ケンカをするのも馬鹿らしい相手というのはいるものだ。

 ネイン君、二頭身のVRなのだ。

 意気軒高。

 なになに?

 稽古をつけてやる……?

 わたしがバトル書きたいっていうから?

 へにゃ~、っとしてわたし、

「よ、よろしくお願い、します……」

 もう腰が引けてます。

 武器を扱ったことがないんだけれど。ゲームの中でしか。

 というと、ネイン君思案して、勢いよく手を打つ。

 なんかぐぐいと引っ張られるけれど、あれ、あれ?

 天から眩しい光が……なになに!?

 笑顔で光の下に立つネイン君。

 なんか、人外に見えてくる。

 かっこいい!

 あれ? 三頭身になってるよ。

 どきどきする!

 黒髪前分け、黒い上下、ピタッとしたライダースーツみたいなのを着ている。

 かっこええやん!

 ネイン君ニコニコして頭をなでなでしてくれる。

 どういう意味があるのかな?

 と、背中に右手をやり、グレートソードを抜き放つ。

 すごい覇気だ。

 わたし、すっと蒼ざめて、

「どうしたらいいのー!?」

「最初に言ったはずだ。オレは勇者だったな」

「ははい」

「勇者でなければ、勇者でなければ、オレに価値はない!」

「そんなあ!」

 話がややこしくなっとるがな。

「そんな悲壮になるくらいなら、肩の荷を下ろしなさいよ」

「おまえに言われた通り、オレは勇者じゃないといやなんだよ!」

「戦うべき相手を考えてー」

「そうだと思うことにしよう」

 しゅうう、とオーラというか覇気がネイン君の周りで渦巻いてる。

 それが、まるで戦いの衣となって彼を抱いている。

 緑の……炎? まさか!

 得体の知れない笑みをむけ、ネイン君は再び変身した。

「ま、まるで乙女ゲーのお相手役!」

「そう!」

 びしいッと人差し指をむけてくる。

 でも、だけど、これは……?

「ネイン君……?」

「むかってこなければ、オレは去る!」

「そ、そんにゃ。仲良くできないの? わたしたち」

「おまえの甘さにはうんざりだ」

「ふにゃ」

 すんごいキャラになったな。

 まるでクランプの主人公みたいな隈取り。

 かっこいいけど、なんか、なんかな……。

「ケンカは苦手なんだよ」

「なんだおまえ、べそをかくかと思えば」

「べそなんてかかないよ」

「そっか。しまった。しまったな」

 ネイン君、再び二頭身になって考え込む仕種。

「理由もなしにさ……」

 とわたし、考え考え口を開く。

「この平和を尊ぶ国でだよ? 争ってるなんてナンセンスなんじゃないの?」

 天の神(すごくもっともだけど……)

「正しい意見が通らない、そんな風に扱われたことは?」

「もとから意見をひっこめてるからあると言えばあるし、ないと言えばない」

 ネイン君また考え込む。

「わたしは争うくらいなら、自分の意見をひっこめるよ」

 それで世界がどうなろうとも。

「オレはそんな奴にはならない」

 再び人差し指をさしてくるネイン君。

「どたんばで裏切る気だろ?」

「さあ」

「さあ……って!?」

「どたんばがいつかわからないから」

 けど、そのときは、わたし……。

「逃げる可能性はあるけれども」

「じゃあ、仕事してたら?」

「何の仕事?」

「いそがしい。朝ごはん食べないで、ギリギリの生活。ご飯も食べられない、上司にはぶたれたり脅されたり。本当に朝ごはん食べられないでどうするの?」

 ネイン君は?

「こっそり、ごはん食べられる?」

「いや、わかんないよ。少ないバイト経験からいったら、休み時間をもらう権利は執行するよ」

「そんなことだから、自分で自分を狙ってる奴がいるのに気がつかないね!」

 わあお! 顔だけ乙女ゲーになってずももんと流し目で迫ってくる。

「まさか、オレが嫌いなの?」

「いや、だから、ケンカをする理由がない、と」

「だから?」

 ネイン君腕組み。

「はーあ、疲れたな」

 あ、ごめんごめん。

「ネイン君、偽田中一郎さんとこへ戻っていいよ。ちょっと引き留めすぎちゃったね」

「わがままじゃん。こんなに尽くしてるのに」

 え?

「わたしにバトルを教えようとしてくれてた……?」

「もちろんだ」

 わたし、眉をひそめる。

「いやだよ。バトル怖い」

「欲求不満にならなきゃ」

「?」

「じゃ、戦えないね」

「うん」

 寝そべってたネイン君、がばっと起きて、

「おいおい、それじゃあオレの行き場は?」

「ネインくんは偽田中一郎さんのキャラでしょ? お返ししなくちゃ」

「オレはここがいいの!」

 あらそう。

「わたし、バトルの張本人になるの無理め」

 ぎゅん、とネイン君、花をしょってドアップになる。

 なんだこれは。

 また乙女ゲーか。

「もういい」

 ネイン君膝を抱えてる。

「あ、いやいや。好きにしていてくれて構わないんだよ?」

「不快」

「なんで?」

「かわいくない」

「わたし?」

「そう」

「キャー、ネイン君、かっこいい!」

 ネイン君ニコニコして頭をなでてくれる。

「やすもうか?」

 うん、やすもう。

 脳神経焼ききれそう。

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