じゅうに粒め。

 **ちゃん、**ちゃん……。

 わたしはふっかふかのソファに横たわりながらユメセカイにアクセスを試みた。

 経緯を全部話すと、**ちゃんことヒロインの作者さんに悪いから、かいつまんでお話することとしよう。

 作者は

 偽田中一郎氏!

 → https://kakuyomu.jp/users/nikaseni

 わたしは最初インタヴュアーになったつもりで、ヒロインにアクセスした。

 **ちゃんはピンクのフラワーアレンジの髪飾りをつけて、なんと髪の毛もピンク色のロングヘアをしていた。

 かわいいね、ってわたしが言ったら、なぜか彼女は一瞬気配が希薄になって、可憐な横顔がポリゴンになって髪の毛まで緑になってすうっと消えてしまった。

 なんで!?

 彼女はかわいいとか、言われたことがないそうだ。

 自信がないっていう。

 あらー。

 それはあなたがアイドルだから、みんな軽々しく口に出せないのよ。

 あなたは、花のように可憐で美しくって愛らしい! わたしは言った。

 彼女は戻ってきてくれて、両手をさしのばして、踊りを披露してくれた。

 よかった! 思った瞬間天の神様がわたしの後ろ頭をどついた。

 気にせず、彼女にアクセスを試みるわたし。

 お友達はいないの? って聞いたら、うつむいてしまうのだ、**ちゃん。

 さらに天の神様から殴られ、ようやくわたしは神様に向き直る。

「なにもヒロインを横取りしようとしてるんじゃないよ?」

 天の神「すでにしてるだろうが」

「わたしは彼女が独りぼっちなのが不思議なだけ」

 わたしは彼女の不安を天の神に訴えた。

 ネイン君(ヒロインの彼氏、主人公)は、彼女にはどこかよそよそしいのだそうだ。

 ネイン君は好きだと言ってくれるし恋人のはずなのに、と……。

 せめて彼女に友達がいたら、心休まる相手がいたら、不安も少しは減るんじゃないかって。

 そうしたら、天の神は

「それは彼女が自分で変わらなければならないこと。自分の力で幸せを手にするんだ」

 と……。

 うーん? じゃあ、と話題を主人公のネインに移すわたし。

「ようするに、ネイン君が彼女を幸せにする、そういう話なんだね?」

 天の神はわたしの頭をなでなでした。

 わたしは払いのけた。

「主人公はネイン君だから、ネイン君が変化して、その結果、彼女も変化して、幸せになる、と?」

 天の神はわたしの肩にぽん、と手をおいた。

 まるで、その通りだよ、というように。

 そっかー。

 ネイン君が孤独な彼女を幸せにする話かあ。

 天の神はそうだよ! とこちらをのぞきこんでくる。

 じゃあ、作品中で語られるべきことをわたしが本人から聞きだしたりするのはタブー?

 天の神はひたすらわたしのあたまをなで続ける。

「じゃあ、ヒロインと主人公ネインのお話はこれからも続くんですね?」

 むやみには話さないでよ? と天の神。

「なにを? だれと?」

「********と」

 そうか、彼女の世界は今、止まっているんだね? これから変化するはずだから、余計なことをしないでほしい、と?

「そう」

 ふーむ。

 じゃあ、わたしが**ちゃん**ちゃん言って友達になろうっていうのは、実はお話上迷惑ってことだ。

 天の神、ごめんね? ごめんなさい。

 でも彼女泣いてるよ? ここにネイン君を呼ぶわけにいかないの?

「そっかー。おまえには見えるのな」

 うん、ユメセカイにアクセスすると、見えちゃうんだよ。

 わたし、彼女に友達を作ってあげて欲しい。お人形とか、マスコット相手にでも話しかけたりできたらいいなと。

 そしてそのマスコットが彼氏のネイン君からの贈りものだったりしたら、ロマンチックよね?

「よし、それで行こう」

 天の神は納得してくれたようだ。

 偽田中一郎さん、天の神があなたにインスピレーションを送ってくださいますように!!!


 そしてわたしは夢から醒めた。

 醒めたうえでまだ考える。

 プレゼントはいけないかな? 

 偽田中一郎氏のヒロインに。

 それならいいよね?

 天の神がうん、と言ったので。

 わたしはヒロインにメイドインイタリーの茶葉入れの瓶にラベンダーキャンディーをつめて赤と緑のリボンをかけて、クリスマスプレゼントにすることにした。

 わ、でも今は、モナカ「鮎」がマイブームだから、一本あげる!

 彼と半分こすると、より仲良くなれるんだよ!!

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