メアリさんの執事〜俺の雇い主はツンデレ吸血鬼〜

ゼロん

~プロローグ~

 

 「た、助けっ、誰かっ! 誰か助けてくれぇ!!」


 こんな広い洋館の中でいくら声を張りあげても、館内の人間に聞こえるかわからなかった。しかし、少年はあまりの恐怖で叫ばずにはいられなかった。足を止めてはいけないことはわかっていた。


 なぜならーー

 

 少年の後ろからすごいスピードで迫ってくる、ナイフを持った赤眼の人物が少年を殺す気満々ということは赤ん坊でもわかるからだ。


 「くそっ、死因が方向音痴とかありえねぇ! 出口はっ、出口はどこだ!!」


 この洋館の窓は鉄格子が張り巡らされており窓からの脱出は不可能。


 さらにこの少年はうすうす気がついているが、今走っている方向は出口とは反対側、どんどん屋敷の奥に向かってしまっているのだ。


 そして少年が疲れてきたのか、追跡者がスピードを上げてきたのか、あるいはその両方が原因か、徐々に追跡者と少年との距離が縮まっていく。


 このままでは追跡者に捕まるのも時間の問題。


 まさに「詰んでいる」とはこのことだろう。

 だがーー


「ん? あいつ急にスピードを落としやがったぞ?」


 何かにおどろいたのか追跡者のスピードがガクッと落ちたのだ。


 チャンス到来と少年は思い、近くにあった部屋の扉を開けて隠れようとする。


「おいっ、待て! その部屋は……!!」

 

 追跡者の声を無視し少年はその扉を開く。

 

 だがこの時少年は思いもしなかった。

 

 やけくそでこの扉を開けたことによって自分の運命が大きく変わったことに……


 

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