No.2 絶望の光


少し歩いたのだろうか。


まだ、暗い空間が続いていた。


ふと気づくといつのまにか、俺の足音だけしか、聞こえていなかった。



俺は足を休める事なく歩き続けた。



目の前には数時間前に見た暗闇の扉があった。


その扉から漏れる光は微小に光りながらも俺の目の前を照らしつけた。


俺は早歩きでその扉に向かった。


ずっと闇ばかりが続いていた所よりも、光のある所の方が何倍も気楽だ。安心感が俺を包み込む。


扉に入ったとき、まだ建物の中である事を知った。


目の前には、メタリックの壁、左右には光がありながらも先が見えないほどの長い通路。


その時、安心感が緊張感へ変わっていった。


長い通路には一定間隔で、壁と天井、床に線のように長く繋がった黒い隙間がある。


今来た道を戻ろうと俺は振り返った。


しかし、扉は音もなく消えていた。


扉があった所を叩いたり蹴ったりしたが空洞の音は聞こえず、ずっしりとした低い音しか聴こえていなかった。


「くそっ。何でもありかよ。この建物!」


俺は耐えきれず声を上げる。


そんな時だ。


「Aa215さんのサポートをさせていただきます。よろしくお願いします。」


高い女性らしい声が聞こえた。


しかし、女性の声にはAiのように感情がないらしかった。


考える暇もなく、


「この施設についてお教えします。


この施設内ではゴールが存在します。いくつもの仕掛けがあります。


このフロアをクリアしましたら素敵なごほうびがあります。


なお問題は奥に行くほど難しくなります。」


(このAiが言っている事はなんなんだ?ココは俺が見た限りでは迷路みたいな感じなのだが。)


(それに、ごほうびとは、一体何のことだろうか?こんな状況下で何かもらっても全く嬉しくないのだが!)


「あと、15秒です。」


また、Aiの声が聞こえる。


俺は目が覚めてから今までの事が頭をよぎった。


(確か、ここには4つのルールがあったはずだ。


その一 言葉を交わしてはいけない。

その二 とどまらない。

その三 走ってはいけない。

その四 他の奴にヒントを与えない。


と、奴は言っていたな。)


〔その二 とどまらない〕


このカウントダウンなのだろう。


(居続けたらどうなるのだろうか。)


いや、考えるのはよそう。


俺には死を意味しているのだと思うほかなかった。


また、無理やりにでも動く他なかった。


そして、俺は何も考えず右に進む。


長い闇の通路。微小の光の中、コツコツと自分の足音が鳴り響く。


(本当に不気味だ。この施設は一体何なのだろうか。)


俺は、先の見えない通路の中、歩きながらただその答えだけを求めた。


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