出会い

第1話

「ここか....。」


 かなり大きな門構えの前で俺は高鳴る心臓を抑えた。それでも、ばくばくと五月蝿い。だけど、無理もない。ここは一ノ瀬時雨宅。ずっと憧れている人に会えるのだ。緊張しないわけがない。


 一ノ瀬時雨という作家は、今や超が付くほどの人気作家だ。書く作品の面白さ、凄さも勿論だが、何といっても美形であることだろうか。そこらのイケメンモデルやイケメン俳優よりも端整な顔立ちをしている。


 艶やかな黒髪に涼しげな切れ長の瞳、スッと通った鼻筋に薄い唇、キリッとした凛々しい眉....。男の俺でも見惚れてしまうくらいの美男子だ。世の女性が放っておくはずがない。


 そしてもう三十路になるというのに若々しい。


 あまりメディアの露出は好まず、サイン会も数えるほどしか開かないため、顔を見る機会など、ほとんどないわけだが、稀にその顔を拝める機会があれば、誰もがその顔を忘れられないような、美しさだ。


 テレビ出演のときも女優やモデルなどに言い寄られていると友人から聞いた。

 だが、見向きもしないらしいのだ。


 って、こんなことを言ってる場合ではない。


 俺、五十嵐睦月も作家を志している。

 弟子入り、というとおかしいが、どうにかお近づきになりたいと、数多の繋がりを駆使してここまで来たのだ。


 まさか、彼の編集者と知り合えるとは思わなかったけど...。

 掛け合ってくれた結果、なんと...!


『弟子にしても良い。ただし、住み込みで。』


 願ったり叶ったりである。


 しかし、何故住み込み?...本人に訊けば良いか。


 俺はインターホンを鳴らす。

 本人が出てくれるのだろうか?いや、こんなに大きい家に住んでいるのだから、お手伝いさんとか居るよな...。


 と思っていると、聞こえたのは予想外の声で。


『はーい!』


 これは.....幼い...子供の声?

 え、何で子供?お、お手伝いさん?いやいや。いつの時代だよ。


 そんなことを思っていると、木で出来たその門は開いて、そこに居たのは・・・・


「あ!お客さん!?いらっしゃいませ!」


 艶やかな長い黒髪を持った可愛らしい美少女だった。


 ・・・・・・えええ??

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