第10話 望郷
2人と1匹は遅めの昼食にありついていた。ロージーとクロードは
コッシローは相変わらず、米粉入りのパンをガリガリとかじっている。クロードがパンで喉を詰まらせて窒息されても困るので、小鉢に
「ちゅっちゅっちゅ。こんなご馳走をもらえるなんて、ありがたい限りなのでッチュウ。ハジュンの小僧は
お腹がふくれたコッシローがテーブルの上でゴロリと寝ころび、腹を両手でさすりながら、四大貴族のひとり、ハジュン=ド・レイへ文句を言っているのであった。
ロージーたちは、ハジュンさまとこのネズミが既知の仲であろうことは予測できたのだが、ハジュンさまが、このネズミを餌付けしていないことから、主従の仲では無いことが伺い知れたのであった。
「コッシローは普段、どこで寝泊まりしてるんだ? ハジュンさまのところに厄介になっているんじゃないのか?」
クロードの疑問も当然であった。わざわざ浮島から
「ちゅっちゅっちゅ。ハジュンの小僧とは利害が一致したゆえに、今回は手を組んでいるだけでッチュウからね。ボクはハジュンの小僧に飼われているわけではないでッチュウ。だから、普段はハジュンの屋敷の敷地内で勝手に寝床を作って、勝手に食事にありついているといったところでッチュウ」
「誇り高いのか、卑屈なのか、判断がつきにくいわね……。いっそのこと、ハジュンさまに飼われちゃったほうが、良い生活を送れそうな気がするんだけど?」
ロージーがそう言うと、コッシローは右手を左右に振って、ちゅっちゅっちゅと鳴き、ロージーに否定の意思を示す。
「わかってないでッチュウね? 今はこんなネズミの姿でッチュウけど、ボクはこのポメラニア帝国周辺では3本指に入るほどの大魔導士なのでッチュウ。そんな誇り高きボクが誰かの下につくわけにはいかないのでッチュウ!」
(ネズミの割りには存外、誇り高いわね……。でも、そもそもとして
ポメラニア帝国はエイコー大陸の西に位置する帝国であった。ロージーが今、住んでいる火の国:イズモ。前に住んでいたのが水の国:アクエリーズ。そしてクロードの出身地である1年中寒い風の国:オソロシア。さらにロージーの母親の生地である乾燥地帯の土の国:モンドラ。この四か国と4つの浮島。さらに岩石で出来た巨人が抱え上げている半球状の岩盤。この岩盤の上には
それら全てを合わせて、ポメラニア帝国となっている。しかし、このポメラニア帝国内で【
「ねえ、コッシロー? あなたはどこの国の出身なの? ポメラニア帝国内では無い気がするし……。悪いんだけど、わたしは
「ああ、ロージー。俺もそれはずっと気になってたんだ。そもそも、
ロージーがコッシローに疑問を呈すると、クロードも続けざまにコッシローに質問を上乗せするのであた。疑問を投げかけられた側のコッシローは、ふと、2人から視線を外す。そのコッシローのからし色の双眸は、どこか望郷を漂わせる色合いへと変化していたのであった。
コッシローは右手で右目を一度、こすったあと
「ポメラニア帝国成立前に【
「ええ……。それはさすがに知っているわよ。今から遡ること約250年前まで
「そうでッチュウ……。その【
「えっ? じゃあ、あの岩の巨人の足が太ももの中ほどまで地面に埋まっているのは……」
宮殿が建っている半球状の岩盤を支える岩石で出来た巨人。その巨人はひざまずいた格好で、首の付け根を支点に半球状の岩盤を抱え上げている姿であった。しかしながら、何故か、足首から膝、そして太ももの中ほどまで地中に埋まっている様相となっていたのである。
その理由は、地中に出来た大穴から
「
「そ、そんな……。じゃあ、ポメラニア帝国の初代:アキータ帝はわざわざ浮島や自分が住む宮殿をあんなところに建てるために、コッシローの住処を潰して、さらには
「それらはアキータ帝が自分の権威を誇示するために造られただけでッチュウ……。最も重要なのはポメラニア帝国を流れる河川のほぼ全ては、
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