絶望と希望

勝利だギューちゃん

第1話

絶望と希望は、常に隣り合わせ。

表裏一体。

考え方次第で、どっちにも転ぶ。


「ねえ、君の名前は何?」

「僕の名前?」

「うん、教えて」

「僕の名前は、絶望(仮名)だよ。君の名は?」

「私の名前は、希望(仮名)だよ」

絶望と名乗る少年と、希望と名乗る少女は、

切り株に背中合わせに座っていた。


「絶望くん」

「何?希望さん」

「私もね、君みたいな時があったんだ」

「僕みたいな?」

「うん」

信じられない発言だ。


人間自分が絶望にいる時は、「何で自分だけが」と思ってしまう。

頭では、違うとわかっていても、心がついてこない。


「ならどうして、希望になったの?」

「それはね」

「うん」

希望は絶望の手を握った。


それはとても温かく、そして柔らかだった。


「きっかけは小さな事なんだ」

「小さな事?」

「考え方次第でどうにでもなる」

「それが出来れば苦労はしないよ」

「だよね。私もそう思うよ」

「なら、その小さなきっかけって何?」

希望となのる少女は、微笑んだ。

いや、微笑んだように感じた。


背中合わせのために、絶望から希望の顔は見えない。


「ねえ、絶望くん」

「何?」

「私の顔、わかる」

「分からないよ。背中合わせだもん」

「当ててみて」

絶望は腰をあげ、希望の顔を見ようとするが・・・


「あっ、見ちゃだめ。そのままで想像してみて」

「声から?」

「うん」

絶望は、しばらく考えた。

声から想像するしかない。


優しい声だ・・・

僕の手に振れている希望さんの手は細い。

すると全体的に、細身と言える。


髪が背中にあたっている。

ということは、ロングヘアーだ。


タレントやアニメキャラに例えてもいいが、知らなければ意味がない。


「ねえ、絶望くん、わかった?」

「うん、あくまで憶測だけど・・・」

「うん」

「ロングヘアーで細身なのは、僕の体に振れているのでわかる」

「正解。顔は?」

「目は大きいね。二重だと思う。鼻は高い。唇はやや小さめ」

「うん。だいたい当たってるよ」

希望が笑っているように感じた。


「で、きっかけは?」

「それだよ」

「えっ」

「だから君が今言った事が、きっかけ」

「僕は何も・・・」

希望が空を見上げたように感じた。


「絶望くん」

「何?」

「君は知らないと思うけど、君の事を想っている人はすぐ近くにいるんだよ」

「すぐ近くに?」

「それに気付くのが、小さなきっかけなんだ」

「気付く事?」

希望がこちらを向いた。

少しだけ、顔が見えた。


「もし気付いたら、『僕はひとりじゃない』と思えるの。

そしたら、その人が力を貸してくれるわ」

「力を」

「正直、君は弱い」

「否定はしない」

「でもね。君には君にしかない強さがあるの」

「強さ?」

「しばらく、君と話していたけど、君は逃げなかったよね」

「うん」

確かに、絶望は逃げなかった。


「それは、私の事を信頼してくれているから。それが君の強さだよ」

「でも、それなら誰でも・・・」

「ううん、君じゃなきゃだめなの」

「どうして?」

「それはね。私が・・・・」

「君が?」

「これから先は、君で答えを見つけて。私が出来たんだから、君にも出来るよ」

わからない。でも、少しだけ力をもらった気がする。


「最後にひとつだけ、力を貸してあげる」

「力を」

そういうと、希望は絶望の肩に手をやった。

すると、いつの間にか、切り株から立ちあがっていた。


「私が出来るのはここまで」

そういうと、希望は去って行った。


絶望は去りゆく希望に、質問をした。

「また会えるの?君の本当の名は?」


「名前は言えない。でも、また会えるよ」

「いつ」

「それは君次第」


絶望は、希望の顔を見る事はなかった。


絶望は想った・・・

「さあ、勇気を出してやろうか・・・」


その勇気がきっかけだと言う事を知るのに、時間はかからなかった。

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絶望と希望 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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