月の見えない寒空に

@BEN-G

第1話プロローグ



「ねぇ?いくらで買ってくれるの?。」


エントランスをくぐるとそこには50代後半のややくたびれてはいるが、装いに清潔感は忘れていない紳士がコーヒーに影を落として、自分が写り込んだアメリカンを飲んでいた。


その男の目の前に座ると理央は再び口を開いた。「ねーぇ?いくらにする?」理央は白いシャツのボタンを2つ外し、間からわざと谷間が見えるようにした。下着の色は青だった。水色がかった青色で、華の刺繍がしてあった。男は上から下から理央を見定め、5000円を置いて一言口を開いた。

「これで、帰りなさい」

女は驚いた、驚いたと同時に心の奥で少し安堵したのを覚えている。

そのまま理央は5000円を受け取り御堂筋へ消えて行った。男はしばらく渋い顔でコーヒーを飲み何か物思いに耽っていた。

とても寒い、冬の日だった。


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